2019年9月19日 第38号
独り言というのは、いわゆる自分との「会話」である。言葉自体はたいして意味がないのかもしれないが、何かを言おうとする際の思考の過程には、その場を埋めるための何らかの言葉が発せられているものだ。これは実際に普通に会話の中で使われている言葉と同じである。
That reminds me… 「そういえば…」
“remind”は何かを思い起こさせる意味がある。「そういえば」ということで、別の会話を始めることも可能であるし(何らかの関連性が必要だが)、その会話が何を思い出させたのかを言うこともできる。
That reminds me, I just remembered that I have to do my Laundry! 「そういえば、洗濯しないといけないことたった今思い出した!」
また、話されていることに対して、さらに掘り下げて関連付けた事柄を話したいとする。
Come to think of it 「考えてみれば…」
Come to think of it, I have never tried sushi. 「よく考えたら、俺、寿司食べたことないわ」
上の例は下の表現に置き換えることもできる。
Speaking of which, 「そういえば…」
Now that you mention it, 「そう言われてみると…」
また、他によく聞く表現としては以下の例もある。
For what it’s worth, 「効果があるかどうか(はわからないけど)」
“worth”は「〜に値する」という形容詞。やってもそうする価値があるかどうかわからないけど、とりあえずやってみよう、とりあえず行ってみよう、という姿勢を示す。
For what it’s worth, this is something I came up with. 「いいかどうかわからないけど、これが俺の考えた結果だ」
For the life of me, I can’t remember what I gave her for our anniversary last year. 「どうしたものか、去年の結婚記念日に彼女に何をあげたか思い出せないんだよ」 似たような表現としては、下の例もある。
I don’t know what’s wrong with me… 「いやどうしたことか(わからないんだが)」 またはなかなか起きないことが起こることを話す時。
Believe it or not… 「信じられないかもしれないが…」
Believe it or not, they are finally getting married! 「信じられないかもしれないけど、彼らはついに結婚するよ!」
昔のなじみの友達と久しぶりに何かしたいと誘いたい時。
For old times’ sake 「昔のよしみで…」
Let’s go eat some yakitori for old times’ sake. 「昔のよしみで焼き鳥でも食いに行こうぜ」
相手の言う言葉が何であれ、あまり関係がないと思う場合。
No matter what you say 「君が何と言おうとも…」
No matter what you say, it won’t change my mind. 「君が何を言っても、僕の考えは変わらないよ」
独り言は頭の中で交わされる会話でもある。ということは上記のような言葉を頭の中で発せられるようになると、英語で考えていることになる。英語で物事を考えるということは多くの人にとっては上級のレベルに思えるかもしれないが、実際は自分との会話を英語でする努力を重ねるたびに簡単になってくる英語の上達の過程である。
(文・イラスト 亀谷長政)