2017年11月23日 第47号

 

 著者にとって日本国内芸能ニュースの発信地は実は何を隠そうバンクーバー新報(共同通信)である。週末に11月16日(2017年)号をランチを食べながら読み、何気なく見つけた記事が「美の固定観念に立ち向かう女性四人組—CHAI」だった。女性が持ちやすいコンプレックスを並べ立て、一般的に「かわいい」とされている概念のルックスを持たない女の子たちを「NEOかわいい」と称している。早速YouTubeなどで検索(SpotifyにもEPがあるのを発見!)、音楽の斬新さと、ルックス、曲やライブのノリの元気よさはオジサンながらにっこりしてしまって、子供たちに聞かせている日々。

 さて、この人々が持つ「コンプレックス」、和製英語ともいわれるのだが、英語でも同じように使っていいのだろうか?

 簡潔な答えは「イエス」。しかしその他、異なった意味合いも含むため、今日のトピックとしたい。

 日本語で言う「コンプレックス」(complex)は簡単に言うと「自分のことに関して抱く劣等感」(英語で言うなら“inferior complex”)と言える。

He has a complex about his height. 「彼は自分の背に対してコンプレックスを抱いている」

Don’t make fun of my nose! You are giving me a complex! 「わたしの鼻笑わないでよ!コンプレックスになるじゃない!」 よって、心理的なニュアンスを含めた、潜在的な恐れや、苦手意識は別の方法で表現される。

I have a fear of spiders. 「クモへの恐れがある」 (または“phobia”「恐怖症」を使ってもいい)

I’m scared of women in general. 「僕は全般的に女性が苦手なんだ」

I’m not that good at talking with people. 「あまり人と話すのは得意じゃない」

 よって苦手意識(それが劣等感につながるかもしれないとはいえ)がすべて“complex”ではないということ。

 英語の「コンプレックス」はさらに形容詞として使われる。

Her situation is a bit complex. 「彼女の事情は少し複雑だ」

 ここでは「複雑(complicated)」の同義語として使われている。

He’s a complex person. 「彼は読みにくい人だ」

 ここではコンプレックスを持った人ではなく、層が厚かったり(multi-layered)、もっと奥が深そうな(deep)人を指して言う。

 コンプレックスは「緻密」という意味でもあるので、ランダムな複雑さというより、もっと宇宙や人体の細胞のような規律正しい複雑さを表している。

The complexity of their music is out of this world. 「彼らの音楽が持つ緻密さはこの世界を超えている」

 北米ではコンプレックス解消も結構、“LOVE YOUR BODY”系の、間違えればいささか不適切でエクストリームな映像が氾濫する中、CHAIという、黒髪で太い眉毛の女の子たちが元気いっぱい音楽を弾く姿を見れたのは、とても新鮮だった今日この頃である。

(文・イラスト 亀谷長政)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。