2020年3月5日 第10号
スウェーデン出身17歳の環境活動家として知られるグレタ・トゥーンバーグさんを揶揄しているとみられるステッカーが、アルバータ州で出回っているのが27日に分かった。
ステッカーには、少女と思われる若い女性の裸の後ろ姿に、二つに分けた三つ編みのそれぞれの先端を、後ろから誰かが持っているか引っ張っているかのようなイラストが描かれ、腰のあたりに「グレタ」と書かれている。そしてそのイラストの下には、アルバータ州レッドディアに本社を置く石油・ガス関連会社として知られるXサイト・エナジーサービス社のロゴが大きく入っている。
このステッカーの存在が国会にまで届いたきっかけは、ステッカーを見た同州の女性ミッシェル・ナラングさんが、ソーシャルメディアに掲載したことだった。ナラングさんは未成年に対するこのイラストはまるで児童ポルノみたいだと同社に電話で真意をたずねたという。すると返答は、彼女は17歳だから未成年ではないというものだったとテレビインタビューで語っている。
アルバータ州は天然資源産業が主要産業だが、2014年に原油価格が急落して以降、失業率は国内最悪となり、いまだに経済が回復できないでいる。それに加えて昨今の環境対策への動きから天然資源、特にアルバータ州のオイルサンドは批判の的となっている。
天然資源産業に従事する州民が多いアルバータ州で、こうした背景が州民のストレスとなっていることは間違いない。
トゥーンバーグさんは、昨年アメリカ・ニューヨークの国連環境会議に出席した後、カナダを訪問。アルバータ州も訪れている。その時には環境問題に危機感を抱く多くの若者が集まった一方で、天然資源産業従事者とみられるトゥーンバーグさん訪問反対派も駆けつけた。
アルバータ州は現在、環境問題と天然資源産業重視経済の間で揺れている。
しかしそれが今回のステッカー配布の言い訳にはならないと、アルバータ州リーラ・アヘア女性の地位向上大臣、ジェイソン・ケニー州首相が批判しただけではなく、28日の国会でも問題視された。ケベック州の新民主党アレクサンダー・ボレリス議員が、若い環境活動家の女性に対する性的暴行を助長するようなステッカーを、国会として強く非難すると語った。
ステッカー発覚以降、一切メディアへの対応を無視していたXサイト社だったが、3月2日になって謝罪声明を発表。ステッカーに描写されたイラストは同社や従業員の価値観を反映するものではないとしながらも、自分たちが配布したことを認め回収に努めることを約束している。
アルバータ連邦警察は今回のステッカー配布について捜査した結果、特定の人物に危害を加えるような刑事的な犯罪や児童ポルノの可能性はないと発表した。