2020年1月1日 第1号
カナダをほぼ2分したトランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画について、再び裁判所で反対派と推進派が争うことになった。ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーの連邦上訴裁判所で対決するのは、反対派の先住民族4ネーションと推進派の自由党政権。先住民族は、拡張工事計画を再び承認した自由党政権は先住民族への説明責任を十分に果たしていないと訴えている。
同工事計画については先住民族6ネーションが、先住民族への説明責任を果たしていないこと、環境調査がずさんでバンクーバー沖に生息するシャチへの危険性を考慮していないとして以前にも訴えた。これに対して2018年8月に連邦上訴裁判所は原告の訴えを認め、工事差し止めを命じ、連邦政府は先住民に双方向の十分な話し合いの場を持って説明責任を果たすこと、シャチへの影響を考慮した環境対策を講じることを言い渡した。
これを受け、自由党政権は裁判所の判決に従うと発表。先住民族との十分な話し合いの場が持たれたこと、さらに強固な海洋環境対策を講じたことを理由に、2019年6月に再び拡張工事計画を承認した。
今回の裁判は、この2回目の承認に対して先住民族4ネーションが訴えを起こしたもので、連邦政府の先住民族への対応は前回よりもさらに悪くなっていると訴えている。
トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画は、これまで複雑な経緯をたどっている。同事業計画は前保守党政権時代から計画されていたがパイプライン建設を推進する保守党でさえ承認に踏み切らなかった。しかし2015年にジャスティン・トルドー自由党が政権を取った後の2016年11月に計画承認を発表。先住民族、環境活動団体、バーナビー市、バンクーバー市が、これに強い反対を表明した。
2017年BC州で新民主党(NDP)政権がグリーン党協力の下で誕生すると、BC州、特にメトロバンクーバーで反対の声が強くなった。
同パイプラインはアルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市まで延びる現存する1150キロメートルのパイプラインを拡張する計画で、事業費は74億ドルから93億ドルと試算されている。当初はキンダーモーガン社が所有していたが、2018年8月に、連邦政府が45億ドルで買収した。工事はすでに公式に開始されている。