2019年12月19日 第51号
野党第一党保守党アンドリュー・シェア党首が12日、辞任を表明した。国会で他の議員らの前で「家族との時間を大切にしたい」と理由を語った。与党自由党ジャスティン・トルドー首相や野党ケベック連合党イヴ-フランソワ・ブランシェット党首、新民主党ジャグミード・シング党首は、ライバルとして選挙戦を戦った党首を労った。
2015年選挙で10年続いた保守党政権はトルドー自由党に敗れ政権の座を渡した。その責任を取ってスティーブン・ハーパー前首相が辞任、暫定党首にロナ・アンブローズ議員が就き、2017年にシェア党首が党首選で勝利し党首に。2019年10月の選挙をシェア保守党として戦った。
しかし党首に就いた当初から知名度の低さが選挙に不利に働くのではといわれていた。それでも選挙戦態勢に入って以降、トルドー首相のスキャンダルが続出。SNCラバランススキャンダルでは、支持率で初めてシーア保守党がトルドー自由党を上回った。さらにトルドー首相の顔黒塗り写真が流出、トルドー首相は謝罪に追われた。こうしたトルドー首相自身のスキャンダルがあり、保守党は政権奪回だけではなく過半数での勝利もあるのではないかと期待された。
しかし結果は自由党が少数派とはいえ政権維持に成功。保守党は前回選挙よりも議席数を増やしたものの、政権奪回に失敗した。そこで、党内から敗因はシェア党首自身にあるのではないかとの声が上がった。
シェア党首は、妊娠中絶反対派で、性的少数派LGBTQコミュニティにも理解を示していない。この2点についてすでに党として支持すると決定しているので、決定事項に従うとしたものの、個人的な信条については説明を避けた。特にLGBTQミュニティの対応については、プライドパレードに一切参加しないなど、かたくなに拒否している。こうしたシェア党首の個人的な信条がオンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュ・コロンビア州の都市部での票に影響したのではないか、このままシェア党首が続投すれば次の選挙も勝てないのではないかとの声が上がり、公に辞任を求める声が党内から聞こえてきた。
当初は今回の選挙では前回より議席を伸ばし、得票数では自由党を上回っていたと自身の成果を主張していたが、ついに辞任を表明するに至った。自由党が政権を維持しているが、少数派政権のため次の選挙がいつ行われるか分からない。早ければ2年以内に実施される可能性がある。その時になって党首を交代していたのではまた自由党に負けるとの焦りが党内にあったと伝えられている。
シェア党首が辞任を表明したことで、次期党首候補が誰になるのか注目が集まっている。現在のところ、党首選に出馬するのではないかと言われているのが元国防大臣のピーター・マッケイ氏。2015年、2019年と選挙には参加していないが、最も実力のある党首候補として注目されている。エリン・オトゥール議員は前回の党首選で3位になっている。今回も出馬するのではと思われている。ただオトゥール氏は知名度が低い。
一方でサスカチワン州前州首相ブラッド・ウォール氏の名前もあがっている。同氏は強烈な存在感でトルドー首相が推し進める炭素税導入に断固反対した州首相で、保守党からは彼のリーダーシップに期待する声がある。しかし本人は出馬を否定している。
社会的保守主義を目指す保守党議員からはアンブローズ元暫定党首の復活を希望する声も上がっている。2年間務めた暫定党首でのリーダーシップ力が高く評価されている。
リサ・レイト前労働大臣の名前もあがっているが、今年の選挙で落選している。本人も党首選に立候補する意思がないことをすでに表明している。
保守党はいつ頃党首を決定するかについては発表していないが、来年4月に党大会が予定されているため、その時に決定するのではとみられている。シェア党首は次期党首が決定するまで党首を継続することを発表している。