2019年12月12日 第50号
総選挙から6週間、ようやく国会が再開した。5日にはジュリー・ペイエッテ総督が自由党政権の用意した議会開会の式辞を読み上げた。
式辞にはこれからの自由党政権の方針が示されているだけに内容に注目が集まった。総選挙で過半数を取れなかったジャスティン・トルドー自由党が初めて少数派政権として臨む議会は協調がテーマ。野党や各州政府と調整しながらの政権運営となる。
この日読み上げられた重要な政策は5項目。気候変動対策、中間層への支援、先住民族との和解、国民の安全と健康、国際社会での成功。
経済と雇用を前面に押し出していた前政権時代とは違い、さまざまな方面に配慮した内容となった。
その中でも最も詳しい内容となったのは気候変動問題への対策について。2050年までに排出量実質ゼロを目指すことを盛り込み、環境問題へ取り組むことを強調した。
中間層への支援としては、まず初めに中間層を対象とした減税対策をはじめ、住宅市場の安定や携帯料金引き下げなどが盛り込まれた。
総選挙の公約として注目されたファーマケアは、ナショナルファーマケアの導入を目指すと語り、デンタルケアについては検討課題とした。さらに国民の安全を守るという点では銃規制についても言及。ミリタリースタイル自動ライフルの禁止や銃を政府が買い戻すプログラムの実施などが盛り込まれた。
選挙公約が多く盛り込まれた内容だったが、パイプライン建設については一言も言及しなかった。環境対策について多くの時間が割かれたのに対し、天然資源産業やパイプライン建設についてはほとんど言及しなかった。背景には少数派政権ということがある。
トルドー政権は法案可決のためには必ず野党の協力が必要となる。野党第一党保守党以外は環境問題を重要視する党が多く、多くの場合、自由党の政策に近い保守党以外の協力が必要となるため、あえて言及しなかったとみられる。
特にケベック州ではパイプライン建設反対派が多く、野党第二党ケベック連合党の協力を取り付けるためにはパイプライン建設は強調できなかったとみられている。その他の野党新民主党、グリーン党もパイプライン建設には反対の立場をとっている。
この内容に対し保守党アンドリュー・シェア党首は「がっかりする内容だった」と語り、保守党として修正案を作成すると語った。
ケベック連合党イヴ-フランソワ・ブランシェット党首は内容全てに賛成ではないが、党として支持に回るだろうと語った。これで自由党はとりあえず過半数を得ることになる。
新民主党ジャグミード・シング党首は今回の内容では不十分なため不支持に回ると表明したが、話し合いの余地は残すとした。言葉だけではなくて喫緊の課題への対応に行動で示すよう要求した。
グリーン党エリザベス・メイ党首は、環境問題対策が不十分と批判、不支持に回るだろうと語った。
内容についての信任投票は来年に持ち越される可能性が高くなった。CTV政治番組に出演したパブロ・ロドリゲス与党下院院内総務は、投票は新年を迎えるまでには行われないだろうと語った。自由党はすでにケベック連合党の支持を取り付けているため、信任されることは間違いないとみられている。