2019年11月28日 第48号
ジャスティン・トルドー首相は20日、新内閣を発表した。10月21日の総選挙で過半数を取れず少数派内閣として発進する第2期トルドー政権だが、閣僚数は以前よりも多く34となった。
注目されたのはクリスティア・フリーランド前外相。政府間関係大臣に任命されるとともに副首相に就任した。重要な任務は国内の分裂を和らげること。今回の選挙でカナダ西部アルバータ州、サスカチワン州で1議席も取れなかった自由党は、アルバータに縁が深いフリーランド氏を政府間関係大臣に任命し、西側との亀裂修復を図る狙いがある。さらに、外相時代の功績から新北米自由貿易協定も引き続き担当する。国内外で重要な役目を一手に担った。
外務大臣の後任にはフランソワフィリップ・シャンパーニュ前インフラ・地域社会大臣が就任した。国際多様化大臣を務めていたこともあり、TPP11(11カ国による環太平洋経済連携協定)締結に尽力した功績を買われての大抜擢となった。
注目の環境・気候変動大臣にはジョナサン・ウィルキンソン前漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣が任命された。カナダを二分する問題にまで発展しているトランスマウンテン・パイプラインの終着点近くブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバー選挙区ということで、建設を推進する政府代表として当事者たちとの調整役も任されるとみられている。
キャサリン・マッケナ前環境大臣は、天然資源推進派からも環境活動家からも指示されないという問題が噴出した。今回の新内閣では環境大臣を外されることはすでに漏れ聞こえていた。そこで今回就任したのはインフラ・地域社会大臣。環境大臣時代からトランスマウンテン建設推進の旗振り役として前面に出ていたため、今回の任命はまさに適任といえる。
次いでパイプライン関連大臣として天然資源産業大臣にシームス・オリーガン前先住民サービス大臣が就任した。この任命には疑問の声が上がっている。天然資源大臣はこれまでアルバータ州など天然資源産業が中心の州で当選した大臣が任命されていた。しかし今回は議席が取れなかったため、やはり天然資源が重要な産業のニューファンドランド・ラブラドール州からの任命となった。しかし、この任命にはトルドー首相の「お友達内閣の典型」という批判が上がっている。
公安・非常時対応準備大臣にはビル・ブレアー前国境警備・組織犯罪削減大臣が就任、環境大臣に就任するのではとみられていた環境活動家のスティーブン・ギルボルト氏はカナダ民族遺産大臣に就任した。
ビル・モルノー財務大臣、マルク・ガルノー運輸大臣、ハルジット・サージャン国防大臣、デイヴィッド・ラメッティ法務大臣兼司法長官は留任した。
前回の第1期トルドー政権同様、今回も閣僚男女比は同じ。しかし、フリーランド副首相を除いて主要閣僚に全て男性議員が就いているとの批判が出ている。
さらに地域格差も鮮明になった。最も大臣が多いのはオンタリオ州で17。全閣僚の46パーセントを占める、次いでケベック州11で30パーセント。この2州で閣僚の4分の3を占めることになった。これは人口比率からしても格段に多い数字となっている。ブリティッシュ・コロンビア州は4人、東海岸4州で各州1人、どちらも11パーセント、マニトバ州で1人が任命された。
過半数は取れなかったが辛うじて少数派でも政権が取れた要因はオンタリオ州、ケベック州での議席獲得だっただけに、ご褒美任命ではないかとの声も上がっている。
国会は12月5日に再開する。