2019年10月17日 第42号
決戦の日が刻一刻と近づく中、各党の党首の言動も忙しくなっている。先週の党首討論会以降、人気急上昇中の新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首は13日、ブリティッシュ・コロンビア州サレー市で記者会見し、保守党政権誕生を阻止するためには自由党との連立の可能性もあると言及した。
これにメディアが一斉に反応した。カナダでは連立政権は過去にあまり例がない。しかも選挙期間中に連立について言及するのはかなり稀なことから、どこに真意があるのか探る動きがメディアの間で活発になっている。
このシング党首の発言について聞かれたジャスティン・トルドー首相は明言を避け、保守党政権誕生を避ける唯一の方法は自由党に投票することだと語った。
保守党アンドリュー・シェア党首は、自由党・NDP連立が誕生すると税金は引き上げられ、雇用は減少し借金が増えるだけと批判した。
シング党首自身も14日になって連立についての言及を控えた。「国民に寄り添う党はNDPだけ。政権奪取が実現しても、しなくても、NDPは国民のために尽力する。ぜひNDPに投票を」と語り、NDPが掲げる重要事項6項目を実現することが最優先と語った。
NDPが連立に言及する背景には現在の支持率にある。CBCが最新の世論調査結果を集計して導き出した支持率によると、現在自由党と保守党はほぼ互角で、どちらが政権を取ってもおかしくない状況だとしている。さらにどちらかが過半数を超える可能性は限りなく低く、少数派政権になる可能性が高い。そうなれば政権のカギを握るのは第3党となり、NDPの存在感がグッと大きくなる。
15日現在のCBCが集計した世論調査では、保守党が32・2パーセント、自由党31・4パーセント、NDP17・4パーセント、グリーン党9・1パーセント、ケベック連合党6・6パーセント、カナダ国民党2・4パーセントとなっている。
仮に自由党が僅差で保守党に負けることになれば、政権を維持するには連立を組む以外に方法がなくなる。その最善パートナーになり得るのがNDPということになる。しかも7日に実施された英語での党首討論会以降、NDP、特にシング党首の人気が急上昇し、若者世代から支持を得ている。
一方で、党首討論以降もう一つ支持を伸ばしているのがケベック連合党。選挙戦が始まった時にはほとんど誰も注目していなかったが、ここにきて大きな存在感を示し始めている。ケベックといえば各党が力を入れる州。自由党としてはなるべく多くの議席をケベック州で集めたいと考えているが、ケベック連合党の急上昇がどのように影響するか予断を許さない状況となっている。
そう考えると、自由党・NDP連合の可能性もかなり高くなってくるという専門家の見方もある。
選挙戦期間はあと1週間。選挙戦はますます混戦模様を呈している。