2019年9月5日 第36号

 今年10月に実施される総選挙を前に、各党が有権者にさまざまな公約を発表しているが、ここにきて携帯電話料金も争点の一つに浮上してきた。

 ジャスティン・トルドー首相は8月26日、「国民はすでに高いインターネットや携帯サービス料金を支払っているため、これ以上払うべきではないとの認識を持っている。そのため自由党は全ての国民に公平なシステムを提供できる方法を考慮する予定だ」とフランスで開催されたG7の記者会見の席でデジタルサービスへの課税に関する質問に答えた。

 カナダの携帯料金は他の先進国に比べて一般的に高いといわれている。新民主党(NDP)は早くから公約に携帯料金引き下げ策を盛り込んできた。今年6月には「料金の上限」を設けると発表、それにより月々10ドルは安くなると試算している。NDPの政策が実施されればカナダでの料金はOECD加盟国36カ国の平均料金とほぼ同じとなるという。

 自由党は明確な料金引き下げ方法は発表していないが、料金の上限設定か、大手通信会社に小規模プロバイダーへアクセス許可を与えるよう義務化するなどの方法を検討していると語っている。

 カナダ国内の携帯料金については前保守党政権時代から機会があるたびに料金値下げ策を各党が訴えていた。現在は以前に比べて緩やかに下落していると報告されているが、依然として高い水準にある。

 ウォールコミュニケーションが連邦政府の依頼によりまとめた先進7カ国にオーストラリアを含めた8カ国の携帯料金(2ギガのデータ量と全国かけ放題電話料を含む平均的1カ月料金)では、最も高いのは日本で約80ドル。次いでカナダ75ドル、アメリカは61ドル、オーストラリアは25ドル、最も安いのはイタリアで21ドル。

 カナダでは通信大手3社、ベル、ロジャーズ、テラスで市場の約90パーセントを占めている。今回各党が選挙公約に携帯料金引き下げを掲げていることについて、料金の引き下げが強要されれば、これから5G時代に入るための準備に必要な資金が減少すると猛反対している。

 今や携帯は国民の生活になくてはならない必需品。カナダラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)によると、全国の低所得者層世帯20パーセントで携帯料金が家計の9パーセントを占めていると発表している。

 

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