2019年7月25日 第30号
今秋に総選挙を控え、各党が選挙モードに突入する中、ジャスティン・トルドー首相率いる自由党が、選挙対策チームにジェラルド・バッツ氏を起用したことが19日分かった。CBCが伝えた。
バッツ氏といえば、今年2月に発覚したSNCラバラン社が絡んだトルドー政権スキャンダルで深くかかわっていたトルドー首相の元第一個人秘書官。スキャンダルが発覚して以降、政権運営に支障をきたすとして辞職した。
そのバッツ氏を選挙対策チームで重要な役割を果たすポジションに起用するという。SNCラバランスキャンダルをきっかけにトルドー自由党は支持率を落とし、保守党に追い越された。ただ最近になってようやく支持率が回復し始めた矢先のバッツ氏起用に、自由党はSNCスキャンダルが再燃しても、バッツ氏の選挙対策手腕を頼る方針に決めたのだろうと分析されている。バッツ氏はトルドー首相の学生時代からの友人でもある。
CBCが19日に最初に放送し、21日には自由党も認め、バッツ氏の参加を歓迎すると発言する大臣が相次いでいる。
SNCラバランスキャンダルとは、カナダ大手建設会社SNCラバラン社に対する贈賄容疑について司法取引で決着をつけるようトルドー首相やバッツ氏をはじめとする自由党幹部が、当時のジョディ・ウィルソンレイボールド法務相兼司法長官に圧力をかけたとされる疑惑。ウィルソンレイボールド元司法長官がトルドー首相らの要求に応じなかったため、直後の内閣改造で退役軍人大臣へ降格。2月にはウィルソンレイボールド元司法長官と、フィルボット予算庁長官が自由党のやり方に反対して大臣を辞任、トルドー首相はその後、2人を除名処分とした。
トルドー首相は一連のSNCラバランスキャンダルに対して、一貫して間違ったことはしていないと主張している。
SNCラバランスキャンダルでバッツ氏を追求した野党は、自由党の今回の動きを非難している。野党第一党保守党アンドリュー・シェア党首はツイッターで、「SNCラバランスキャンダルを引き起こした張本人を結構簡単に引き戻した」と批判。ピエール・ポリバー議員は、簡単にまた党に復帰したということは2月の辞職は単に「自分の上司のために見せかけの辞職を演じただけ」と痛烈に批判した。
新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首は「失望した」と語り、自由党と自由党政権が自分たちの友人や権力のある団体のためにはすぐにでも行動を起こすのに、多くの国民が必要としていることは先延ばしにするということを改めて示しただけと批判した。