2019年7月11日 第28号
ソーシャルネットワーク(SNS)への投稿を通じ、多くのフォロワーを獲得して強い影響力を持つようになった人のことを、インフルエンサーと呼ぶ。
そんなインフルエンサーのひとりが、大手衣料品チェーン店によって自分のスローガンを盗用されたとして抗議していた問題で、このたび両者が和解に至った。
世界中を旅行してその様子をSNSのインスタグラムに投稿し続けているベルギー人のジョナサン・クッベンさんは、約36万人のフォロワーを持つインフルエンサー。彼が投稿写真に必ず添えるスローガン「母さん、僕は大丈夫(Mom, I'm fine)」は彼のトレードマークとなっている。
そんな彼のスローガンを自社製品のデザインに用いたのは、ケベック州モントリオール市に本社を置く衣料品チェーン大手ライトマンズ。2018年の母の日キャンペーンとして、このスローガンをつけた商品を売り出した。
2016年からこのスローガンを使用していると主張するクッベンさん。ライトマンズは自分のスローガンを盗用したとして、6月末には同本社前にテントを張るなどして抗議活動を行ってきた。「自分は仕事もやめ、車も何もかも売り払って世界中を旅する道を選んだ。スカイダイビングもやったし、サメとも泳いだ。そんなときでも必ず母に対するメッセージ『母さん、僕は大丈夫』を掲げてきた」と取材に語るクッベンさん。そんな彼の3年間の人生をかけてきた『母さん、僕は大丈夫』を、一回限りの母の日キャンペーンのために奪い取ることが道徳的に許されるのかと訴えていた。彼によると、ライトマンズは『母さん、僕は大丈夫』ブランドのTシャツとバッグを合わせて1万点以上販売したという。
クッベンさんの訴えを受けたライトマンズは、キャンペーンから1週間と経たないうちにこれをキャンセルし、それ以降の商品にはこのスローガンを使用していないと取材に答えている。
最終的にライトマンズは、カナダ国内での『母さん、僕は大丈夫』の商標をクッベンさんに譲渡することと、クッベンさんが求めていた、このブランドを使った商品の売り上げを彼の指定した人道支援団体に寄付することで合意した。