2019年5月16日 第20号
アルバータ州ジェイソン・ケニー州首相は13日の記者会見で、来週にも5月30日に炭素税を廃止する法案を議会に提出すると発表した。これにより14億ドルが州民の手に戻ると語り、生活費やビジネスの費用を削減することができ、6千人の雇用を創出することができると、その正当性を強調した。
炭素税は、連邦政府が州政府の独自環境政策を実施していない州を対象に今年4月1日から導入。アルバータ州は4月1日の時点では新民主党(NDP)政権が独自に炭素税を実施していたため導入対象外となっていた。しかし4月に行われた州議会選挙で炭素税反対派の連合保守党(UCP)が圧勝し、多数派政権を樹立。選挙戦で炭素税撤廃を公約に掲げていたため、今回の発表は公約を実行する形となった。
炭素税廃止法案はUCPが多数派のため、可決することが確実となる。これまでオンタリオ州で昨年炭素税を撤廃し、今年の4月に連邦政府炭素税導入が決まった例はある。アルバータ州が5月30日の撤廃を決めれば、全国でアルバータ州のみが炭素税がない州となる。全国に炭素税を導入するとしている連邦政府がどのような対策を取るのかに注目が集まる。
炭素税については、サスカチワン州とオンタリオ州が提訴している。サスカチワン州上訴裁判所は連邦政府の炭素税は憲法違反ではないとの判断を下した。オンタリオ州裁判所の判決はまだ出ていない。ケニー州首相は提訴も視野に入れていると言うが、他州の判決を参考に判断するとしている。
炭素税以外にもケニー州首相は「雇用創出減税」と題した法人税減税も発表した。今年7月1日から現在の12パーセントから1パーセント減税し11パーセントとし、その後毎年1月1日に減税を実施し、2022年に8パーセントを目指す法案も提出すると発表した。これにより民間企業で5万5千人の雇用創出と130億ドルの経済効果があると減税法案に自信を見せた。
石油産業を中心とする天然資源産業が主要産業のアルバータ州では2014年の原油価格急落から経済状況が悪化し、失業率も高くなっている。減税策と炭素税の撤廃、パイプライン建設の推進で州経済の復活を訴えている。