2019年4月25日 第17号
自由党政権アマルジート・ソーヒ天然資源相は18日、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画についての決定を6月18日まで延期すると発表した。当初の予定では5月22日に計画を続行するか中止するかの決定を発表する予定だった。
トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画についてはこれまで複雑な経緯をたどっている。アルバータ州エドモントン近郊からブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市までの既存パイプラインに並列してパイプラインを建設し、アルバータ州のオイルサンド輸送量を増加し、アジアへと市場を拡大することが目的の工事。
しかし輸送量が一日89万バレルと現在の3倍となることから、バンクーバー近郊を航行するタンカー数が月5本から30本に増加する。
ジャスティン・トルドー首相が同計画を承認したのは2016年秋。その後2017年にBC州でパイプライン建設反対を訴えるグリーン党との協力体制を取る新民主党(NDP)政権が誕生した。タンカー増加に伴う事故でのオイル漏れの危険性やバンクーバー近郊に生息する海洋生物特にオルカへの影響が大きくなるとして、同計画に反対していた環境活動家や先住民族、バンクーバー市、バーナビー市に加え、BC州政府が反対に回り、2018年1月に連邦政府の計画取り消しを模索する政策を発表した。
これによりすでに始まっていた工事が滞ることになり、パイプラインを所有するキンダーモーガン社からの圧力で連邦政府が45億ドルでパイプライン買収を発表。一時はパイプライン計画が進むかに見えたが、同年8月に裁判所が環境問題対策と先住民族への説明が不足と工事の停止を言い渡した。
そのため連邦政府は、同計画を承認したカナダエネルギー委員会(NEB)に再調査を命じ、今年2月22日に同委員会が環境への危険性を指摘しながらも経済的効果が高いことから新たな条件を提示して承認した。
カナダ政府はそれから90日以内に同計画を続行するか中止するかを発表することになっていた。その期限が5月22日だった。
ソーヒ天然資源相は関係する先住民族と話し合いが続いているため、「政府はこれまで発表してきたとおり、計画に対する決定は先住民族との話し合いが満足いくものとなって以降に行う」と声明で発表した。
これに対し、先週の選挙で大勝し次期アルバータ州首相に就任することが決まった連合進歩保守党ジェイソン・ケニー党首は、トルドー首相とこの件で話したとテレビインタビューで語り、3度ふりだしに戻るよりは、話し合いで解決して全国的にトランスマウンテンや他のパイプライン建設への同意を得ることが必要と政府の決定延期に理解を示した。