2019年2月28日 第9号
カナダエネルギー委員会(NEB)は22日、トランスマウンテン(TM)パイプライン拡張工事計画を再び承認する報告書を発表した。同計画はNEBの承認を経て2016年自由党政権によって認可されていたが、昨年8月にNEBの承認はブリティッシュ・コロンビア(BC)州沿岸に生息するシャチの生息域を含めた環境への配慮と、関係する先住民族への説明が不足しているとして、裁判所によって工事が差し止められた。そのため、自由党政権は改めてNEBに再調査を命じ、これを受けた報告書が今回発表された。
報告書によれば、パイプラインの拡張工事によってBC州バンクーバーから原油を運ぶタンカーの航行数や温室効果ガスの排出量が増加するという環境的な影響が認められるが、それ以上に大きな経済効果があると承認の理由を説明している。ただし、すでに課している156項目の条件に加え、拘束力はないものの新たに16項目の条件を盛り込んでいる。
連邦政府はこの報告書を基に、90日以内に計画を再承認するかを決定しなければならない。アマルジート・ソーヒ天然資源大臣事務所は、最終的な決定は関係する先住民族との話し合いが終了するまでは下さないと発表している。
トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画は、アルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市までオイルサンドを運ぶため現存するパイプラインを増設する拡張工事で、完成すればオイルサンド輸送量は現在の3倍、バーナビー市から海外市場へと運ばれるタンカー航行数は7倍になると試算されている。
パイプライン拡張工事をめぐっては昨年1月、BC州政府が環境基準を厳しくすることを提案し、連邦政府、アルバータ州政府のパイプライン賛成派と対立。それでも工事は着々と進められていたが、バンクーバー市やバーナビー市、先住民族、環境保護団体などの反対派の強力な反対活動もあり工事は一時中断した。その後、5月に連邦政府がパイプラインと事業計画を45億ドルで買収。8月に裁判所が工事差し止め命令を下した。