2019年2月21日 第8号
ヌナブト準州で1月4日にシロクマの親子を射殺した先住民の老人に対し、カナダ環境省は告訴しないことを決めた。
この老人は、ヌナブト準州北部のメルビル半島先端にある、人口1600人ほどの村イグルーリクに住むピーター・アッバさん。当時同村にはシロクマが侵入しており、アッバさんは環境省の野生動物保護官から、威嚇して村から追い出すよう指示を受けていた。
しかしアッバさんは、人がクマに殺されるようなことがあってはならず、脅すのではなく殺すのがイヌイットの伝統だとして、母親グマと仔グマを射殺した。環境省はこの件を調査した結果、人命と資産を守るための狩猟だったと結論づけた。
一方アッバさんは、先週の時点で、その『狩猟した』シロクマの毛皮は、また当局から返還されていないとメディアに訴えている。シロクマが射殺・解体されたたその日に、野生動物保護官が毛皮だけを持ち去っていったという。
またアッバさんは、先住民コミュニティのメンバーの多くはシロクマに関する法律は知っているものの、それが実際にどういうことを意味するかについてまで理解している者は少ないと語っている。その上で、法律を作っている役人には、ぜひとも先住民コミュニティまで出向いて法律について説明を行い、それに対する先住民の意見を聞き入れてほしいと願っている。「役人は現地も訪れず、先住民の真の姿も知らない。しかしこのことに関しては、先住民が意思決定プロセスを先導する立場であるべきだ」と、アッバさんは語っていた。