2018年12月20日 第51号
オンタリオ州南西部、人口約20万人の都市キッチナーのグランドリバー病院に先月30日、患者の子供たちがサンタクロースとの撮影会に集まった。
近くの町ケンブリッジに住むワイアット・ホートンさん(13歳)は、精神障害を患っているほか、先天性両足内反足を矯正するために、これまで9回の手術を受けてきた。それに加え、2カ月ほど前には白血病と診断された。
そんなホートンさんは病院へ行くのが嫌いだが、この日に限っては待ち遠しい様子だったと、母親で3児の母のリサ・ホートンさんは取材に語っている。彼が興奮した様子でサンタクロースに歩み寄っていく姿を見ただけでも、感動したという。 さらに彼女を幸せな気持ちにさせてくれるのは、そのサンタとの写真だ。一般的な、クリスマスのデコレーションに囲まれ、大きな椅子に深々と腰かけたサンタと写る写真とは、全く異なったものとなっている。
その撮影にはクリスマスらしいデコレーションは一切用意されず、背景となる大きな黄緑色のスクリーンが張られただけの病院の一室で行われた。撮影を担当した地元の写真家エリン・ミカルスキーさんは撮影後、それを画像編集ボランティアにインターネットで送付。すると黄緑一色の背景がだった写真は、完璧なクリスマスの風景になって、写った本人のもとに届けられた。
ホートンさんの場合、背景は暖かな火が燃えるレンガ造りの暖炉の部屋で、クリスマスツリーの横に座っているサンタクロースと手を取り合っているホートンさんが写っている。その脇の窓の外では、トナカイが二人に優しいまなざしを送っているという、とても心温まるクリスマスの情景となっている。
実はミカルスキーさんが行った撮影・画像加工のプロセスは、クリスマス・ウィッシュと名付けられた世界的プロジェクトの一環だった。もとはオーストラリアのボランティアグループが始めた、入院中の子供たちにサンタとの写真を送ろうという企画だったが、それがニュージーランド、そしてイギリスへと拡大したものだ。
たまたま、このことを2年ほど前にインターネット上で見つけたミカルスキーさんは、このグループに参加を申し込んだ。そして何人かの写真家仲間とサンタに扮する友人を募り、この撮影会を行った。ミカルスキーさんは、ほとんどの人は撮影後の画像編集については詳しくないので、いい意味でクリスマスの魔法がかかった写真と思われている。これが彼らをつらい日常から、一時でも解放してくれればいいと願っていると、取材に語っている。
今年は世界中で約200の家族が、こうした特別なサンタとの写真を受け取った。