2018年12月6日 第49号
アルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相は12月2日、同州での石油生産量を削減する政策を実施すると発表した。現在歴史的に低い水準まで下がっているカナダ産石油取引価格に歯止めをかけることが狙い。2019年1月から実施する。
同州首相は1日の生産量を32万5千バレル(約8・7パーセント)削減すると語り、削減量については毎月成果を精査していくとしている。
国内最大の石油生産量があるアルバータ州は、輸出先がほぼ100パーセントアメリカと1カ国に集中している。カナダの原油取引価格は最近急落し、北米の基準価格との差が拡大する一方となっている。
そのため、カナダ原油取引価格を上昇させるために一時的な措置として減産を実施すると発表した。ノッテリー州首相は会見で、この状態を「原油価格危機」と称して、現在の状況では1日に約8千万ドルをカナダは損している計算になる、「カナダの石油を無料であげているようなもの」と語った。減産措置で1バレル約4ドル上昇すると試算しているという。
本来なら取引価格は市場に任せるべきだが、あまりにも差が大きいため影響が大きく政府の介入が必要と判断したと理由を語った。
同州首相は11月29日にはオンタリオ州トロント市で講演し、原油を輸送するための貨物列車を最大で7千車両購入する予定があると発表した。これにより現在よりも1日12万バレル多く運べることになる。車両を最大数購入したとして現在より30パーセント輸送量が増加するという。しかし列車購入で実際に輸送が始まるのは、早くても2019年後半となる。それでは現状が改善しないため減産政策を打ち出した。
しかし、これには業界内でも賛否両論に分かれていると各報道機関が紹介している。
アルバータ州産の石油は輸出先をアメリカ以外の市場へも拡大しようと、原油輸送用パイプライン建設計画が進んでいる。自由党政権になって承認したトランスマウンテン・パイプライン拡張計画は、成長するアジアの国々への輸出を目的としたパイプライン工事だったが、今年8月に自由党政権の承認基準に欠陥があったと裁判所が判断を下した。
アルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市まで原油を運ぶこのパイプライン建設は、計画当初から関係先住民族や環境活動家、バーナビー市、バンクーバー市などが反対を訴えていた。そして8月に裁判所が工事一時中止を命令。先住民族への説明責任と環境対策の改善がみられるまで工事を一時中断することも決まった。
ノッテリー州首相は、一日も早い工事再開とパイプライン完成が価格是正には必要と連邦自由党政権に訴えている。トランスマウンテン・パイプラインは今年5月に連邦政府が45億ドルで買収した。