2018年11月22日 第47号

 アルバータ州カルガリーに住むタリク・アブドゥール=ラザクさんは、イラクからの難民だ。 母国にいる時は、イラク国立管弦楽団のチェロ奏者として活躍していた。しかし彼らが演奏するクラシック音楽は、国内の武装勢力から冒とく的な音楽だと糾弾されていた。

 演奏活動をやめろという武装勢力からの警告に従わなかったアブドゥール=ラザクさんは、2014年のある日、彼らに襲撃される。コンサート終了後に会場をあとにした彼の車を武装勢力が取り囲み、銃撃した。幸運なことに、彼を狙った銃弾はチェロに当たり、アブドゥール=ラザクさんは無事だった。しかし、チェロは大きなダメージを受けてしまった。

 その後アブドゥール=ラザクさんは国外に脱出、トルコの難民キャンプで3年間暮らしたのち、チェロ奏者仲間のスポンサーによってカナダに亡命、カルガリーに落ち着いた。たまたま彼のいきさつを耳にした地元の弦楽器製作者が、彼が肌身離さずカナダまで持ってきたチェロの修理を買って出た。

 修理には6カ月を要したが、チェロは見事に修復された。またアブドゥール=ラザクさんも、カルガリー・シビック・シンフォニーのチェロ奏者に採用された。そして先月行われた同楽団のコンサートが、2014年に銃撃を受けて以来、アブドゥール=ラザクさんの初めての舞台となった。

 

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