2018年11月1日 第44号
ジャスティン・トルドー首相は10月23日、連邦政府が来年1月から導入を目指している炭素税について、4州を名指しで連邦炭素税導入対象とすることを発表した。
対象とされたのは、オンタリオ州、ニューブランズウィック州、マニトバ州、サスカチワン州。これらの州は、独自の環境対策を導入していない、もしくは導入を発表していないことから対象となった。マニトバ州は独自対策を発表していたが、連邦政府が同等の対策として認めないと不満を訴え、今月対策を撤回した。
連邦政府の炭素税は、当初は2018年1月から導入される予定だったが、州政府への配慮から2019年に延期。その間に、各州政府は連邦政府が導入を進めている炭素税と同様、もしくは同等の環境対策課金制度を独自対策として導入するよう求めていた。
炭素税が導入されると、2019年は1トンにつき20ドルが課され、1年に10ドルずつ引き上げられ、2022年には1トンにつき50ドルまで引き上げられる。
トルドー首相は、炭素税の導入は「気候変動対策としては最善の方法」と記者を前に語った。環境対策と経済政策を両立させるというトルドー自由党政権の2016年に発表した肝いり政策でもある。
しかし炭素税導入により、実際に温室効果ガスが削減されるかどうかの効果は依然不透明なまま。炭素税は、国民の生活や経済活動で排出される温室効果ガスに税金を課すことにより、その行動をより環境に優しい選択肢へと促すための政策で、直接排出量を減少させるというものではない。
そのため、野党第一党の保守党は、国民の生活や経済活動を圧迫するだけの対策で効果は乏しいと炭素税導入を批判している。
自由党政権は2015年のパリ協定で、2030年までに2005年比で30パーセントの温室効果ガスの削減を目標としている。しかし、環境省の試算では現在のままでは炭素税を導入しても、この目標を達成するのは難しいとの結果が出ている。
すでに炭素税を導入しているブリティッシュ・コロンビア州やキャップ&トレード制度を導入しているケベック州は対象外。さらに、トランスマウンテン・パイプライン拡張計画の停止により炭素税率の引き上げを凍結すると発表したアルバータ州も、炭素税をすでに導入しているため、今回の対象州からは除外されている。一方で、前自由党政権下ではキャップ&トレード制度を導入していたオンタリオ州は、今年誕生した進歩保守党政権が同制度を廃止したため、今回の連邦炭素税導入の対象となった。
連邦政府の炭素税は自由党政権によると、税収の90パーセントを州民に還元するという。残りの10パーセントは影響を受ける中小企業や学校などの公的機関に配分されるとしている。