2018年10月11日 第41号

 マニトバ州ブライアン・パリスター州首相は3日、導入を目指していた炭素税の実施を白紙に戻すと表明した。同日に開かれた議会で語った。

 マニトバ州は昨年1トンにつき25ドルの炭素税を導入すると発表。税収分は、減税と上昇する光熱費への相殺対策に充てるとしていた。ただ課税額は25ドルの定額とし引き上げることはないという独自案だった。

 一方、連邦政府が2016年10月に発表した炭素税導入は、2018年は1トンにつき10ドルとするものの、税額は年々引き上げられ2022年には50ドルまで引き上げるとしている。連邦政府は、気候変動への対策として、州政府に連邦政府の炭素税同様の効果がある炭素税か、キャップ&トレード制度の導入を義務付け、もし導入されなければ連邦政府の炭素税を強制的に導入すると発表している。ただ導入時期については2019年1月に延長している。

 マニトバ州パリスター州首相は同州の炭素税制度を発表した2017年には、連邦政府の炭素税に匹敵するほどの温室効果ガス削減効果があると自信をのぞかせていた。さらに電力を水力に切り替えるなどの対策も講じていることも評価されるべきとしていた。

 しかし今月3日になって突然炭素税導入取り止めを発表した。理由は、連邦政府が州政府の対策に敬意を表しないだけでなく、マニトバ州の環境政策では不十分で連邦政府の炭素税対策を強制すると脅迫しているためと語った。

 ジャスティン・トルドー首相は先月マニトバ州を訪問し、パリスター州首相とも会談。共同記者会見で他の保守系州政府もマニトバ州にならって気候変動対策を講じるよう考え直してほしいと語っていた。

 この発言も今回の撤回要因の一つと4日の会見でパリスター州首相は語っている。「(保守党系からの圧力を支える)つっかえ棒のように使われるのは誰でもあまり気分がよくないのではないか」と語っている。これまで保守党系州政府ではマニトバ州だけが炭素税導入に前向きな姿勢を示していた。

 現在、全国的に連邦政府の炭素税導入に反対を表明する州政府が増えている。炭素税導入を発表した2016年当時は州政府でも自由党政権が多く、独自の炭素税やキャップ&トレード制度を導入していた。最初から強く反対しているのはサスカチワン州のみだった。

 しかし現在は、今年のオンタリオ州選挙で圧勝した進歩保守党が同州自由党政権時代に導入していたキャップ&トレード制度を撤廃した。

 さらにアルバータ州では今年8月、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画が裁判所によって計画の見直しを迫られたことで完成が先延ばしになることから、新民主党(NDP)政権が炭素税実施への協力を停止すると発表した。

 ニューブランズウィック州では今月の選挙で自由党が第2党となり、第1党となった進歩保守党ブレア・ヒグス党首は連邦政府の炭素税政策を訴えると語っている。

 炭素税に積極的なのは、2008年からすでに導入しているブリティッシュ・コロンビア州と環境対策に積極的なケベック州のみ。ケベック州は今月の選挙で中道右派の保守派CAQが圧勝したが、環境対策には引き続き力を入れることを表明している。

 パリスター州首相の表明を受け、この日の国会では保守党が炭素税の必要性に疑問を投げかけた。トルドー首相は「保守党がなぜ環境汚染を無料でいいと主張し続けるのかがよく分からない」と述べ、温室効果ガスを排出したらその代償を支払うのは当然で、そのために炭素税を導入すると語った。

 しかしトルドー首相にとっては導入を目前にして炭素税に暗雲が立ち込め始めている。

 

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