2018年9月27日 第39号

 ユーコン準州の人口約2千人の町ドーソンシティの金鉱で発見された、氷河期の動物のミイラ―生後間もないオオカミと、カリブーの子供―が、同市のダノジャ・ゾ文化センターで一般公開された。

 同施設は、この地域のイヌイットや先住民族などの文化を紹介するために1998年に市内のユーコン川のほとりに建設され、先住民のトンデック・ウェチンによって運営されている。

 放射性炭素による年代測定からは、これらが少なくとも5万年以上前のものであることが確認された。カリブーの子供のミイラは、頭部と上半身および前足の部分のみで、ドーソンシティ郊外にある金鉱の、およそ8万年前の火山灰を含む永久凍土層から、2016年6月に発掘された。

 また幼齢オオカミのミイラは、同市郊外の別の金鉱から2016年7月に発掘された。こちらは頭から尻尾までの完全な形を保っており、全身を覆う毛や皮膚も良好な状態。このミイラを掘り出した金鉱夫は、犬の死骸か何かかと思ったという。獣医がこのミイラを検査したところ、生後8週に満たないで死亡したらしいことがわかった。

 同準州で氷河期時代の生物の骨や化石が出土することは珍しくないが、ミイラ化した死骸は極めてまれなうえ、ミイラ化した氷河期のオオカミの死骸は、おそらく世界で初めての発見だろうと、政府の古生物学者グラント・ザズーラさんは取材に語っている。

 科学的に極めて重大な発見であることから、これらのミイラはオンタリオ州オタワにある、カナダ遺産保存研究所に登録されることになった。同研究所は、カナダの重要な遺産を保全するために必要なサービスの提供や研究を目的とした政府機関。

 ユーコン準州政府は、このミイラを同準州の州都ホワイトホースにある、ベリンジア博物館(Beringia Interpretive Centre)に展示する予定。今から数万年ほど前、北米大陸はベリンジアという陸地でユーラシア大陸でつながっており、現在の先住民の祖先がそのベリンジアをつたって北米大陸に渡ってきたといわれている。この施設は、その当時の環境や人類の移動の様子を紹介する目的で建てられた、ユニークな博物館となっている。

 

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