2018年3月22日 第12号

 先月中旬に中国で死亡したカナダ人女性の遺体が、入院治療中にかかった費用全額を支払うまでは同国内に留め置きされることになり、家族が心を痛めている。

 死亡したのは、サスカチワン州中部の人口6千人弱の町メルフォート出身のアリシア・ガーロックさん(38歳)。ガーロックさんは中国四川省の成都市で教師として働いていたが、1月に体調が急変、病院で肺の緊急手術を受ける事態となった。その後もICUで人工的昏睡状態に置かれていたが、2月中旬にそのまま息を引き取った。

 体調急変の原因は明らかにされていないが、ガーロックさんは何かのウイルスに感染したと見られている。彼女の死亡を受けて、サスカチワン州にいる家族らは葬儀のために遺体をカナダへ搬送しようとしたが、中国医療当局からガーロックさんの治療にかかった費用25万ドル全額を支払うまでは、遺体の返還に応じないと通告された。

 取材に応じたガーロックさんの兄、トラビス・ガーロックさんは「キリスト教でいう苦行の場、煉獄に突き落とされたようだ。妹が死んだのに、葬儀も何もできない」と、悲しみを吐露していた。

 ガーロックさんは教師派遣元の会社から海外旅行保険に加入はしていたが、それでは全額を支払い切れないという。家族らはお金を出し合い費用の一部を払ったが、インターネットの募金サイトやサスカチワン州政府の支援など、さまざまな方法を探っている。中国のガーロックさんが勤めていた学校の仲間も、寄付集めに協力している。

 またトラビス・ガーロックさんは、海外で仕事や生活をする人々に対し、妹の一件を他人事と思わず、どんな緊急事態になってもカバーされるだけの保険に加入してほしいと、メディアを通じて話していた。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。