2018年2月22日 第8号
ブリティッシュ・コロンビア州の作家が描いた一枚のイラストが、インターネット上で予想外の共感を呼び話題となっている。
17人が殺害された、米フロリダ州南部のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の銃乱射事件。この悲劇に突き動かされるようにイラストを描いたのは、同州バンクーバーのイラスト作家ピア・ゲラさん。これまでもブライアン・K・ボーガン原作のSFコミック『Y・最後の男(Y: The Last Man)』の作画を担当するなど、プロのイラスト作家として活躍してきた。
そんなゲラさんは、犠牲者の一人で同高校のフットボール・チームのアシスタント・コーチかつ警備スペシャリストだったアーロン・フェイスさんをモチーフに一枚のイラストを作成した。フェイスさんは同校の元生徒で、在学中はフットボール・チームの選手だった。
事件当日、高校内で使用されていた無線システムを通じ、爆竹のような音の正体の確認依頼がなされた際、「爆竹ではない」と応答したのがフェイスさんだった。彼は生徒を銃撃からかばおうとして、凶弾に倒れた。
『ヒーローを迎えて(Hero's Welcome)』とタイトルが付けられた、ゲラさんのイラストには、大勢の若者たちがこちらを見てたたずんでいる前に、彼らと向き合っている、大柄なフェイスさんの後ろ姿が描かれている。そして幼い女の子がフェイスさんの手を取り、「フェイスさん、こっち。ほんとに多くの人が、あなたに会いたがってるわ」と語りかけ、若者たちに引き合わせようとしている。
この大勢の若者たちは、いままでに起きた学校での銃乱射事件の犠牲者たちだ。
このアイデアを思いついた時、ネット上で注目されるほどのインパクトはないだろうと思っていたと、ゲラさんは取材に語っている。ところが公開されるやいなや、このイラストに心を打たれた、涙が止まらなかったなど、彼女のもとには多くのコメントが寄せられ続けている。
なおゲラさんのイラストが世間から注目されたのは今回が初めてではない。昨年は、幼児体形のトランプ大統領が、バノン元主席戦略官の膝の上に抱かれながら「自分は大人さ(I'm a big boy)」とうそぶく様子を描いたイラストが話題となった。ゲラさんは、トランプ大統領が選出されて以来、こうした主張を述べるイラストを描く必要性を感じるようになったと、取材に語っている。