2018年1月1日 第1号

 日本を代表する芸術家の一人、草間彌生さんの展覧会がオンタリオ州トロントのオンタリオ美術館で、2018年3月3日から5月27日の間、開催される。

 12日から開始された同美術館の会員限定の先行予約では、開始直後から申し込みが殺到、一時は1万8000人分の待ちが発生、事実上予約システムがパンクした。同美術館の担当者によると、今までこんな問題が起こったことはなかったと取材に語り、まるでイギリスの人気歌手アデルのコンサートチケットを販売していたかのようだと、感想を漏らしていた。

 同美術館のフェイスブックには、「9時間半も待ち続けているのに、まだチケットが買えない」といった苦情が多数書き込まれ、担当者らは前代未聞の事態の対応に追われていた。

 88歳になる草間さんは、カラフルな水玉模様で埋め尽くされた絵画や彫刻など、インスタ映えする作品で有名だが、特にオンライン上で有名になっているのは『無限の鏡(Infinity Mirror)』。鏡を張り詰めた小部屋にオブジェを組み合わせ、まるで無限空間に迷い込んだかのような錯覚を起こさせる作品。

 展覧会では、この小部屋が6つ展示されるが、それぞれの小部屋には4人という入室制限がある。一つの小部屋での鑑賞(滞在)時間は30秒に制限されるものの、外には長い待ち行列ができる。同美術館では、他美術館での草間さんの展覧会もつぶさに調査するなど、この展覧会のために1年以上かけて準備を進めてきたという。待ち時間を減らしたり、待っている間の来館客を飽きさせない工夫を凝らしたりして、館内の客の満足度向上を考えてきたが、決してやさしい道のりではなかったと、取材に語っている。

 なお同展覧会のチケットは、会員と一般客それぞれ約6万枚に限定されている。合計12万人という来場者数は、存命中の芸術家の展覧会で、好評を博したものとしては小規模だという。しかし草間さんの展覧会は、チケットの枚数では評価できない特別なものがあり、緊張しながらも大いに楽しみにしていると、美術館関係者は語っていた。

 次回の会員向けチケット販売は2018年1月9日午前10時(中部標準時)から、また一般向けは2018年1月16日から開始される予定。

 

 

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