2017年9月14日 第37号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに住む父親が、子供たちだけでバスに乗せたことを非難する世間の風潮に、失望している。

 5人の子供の父親エイドリアン・クロックさんは、7歳以上の子供4人についてはノースバンクーバーにある学校への通学に、バスを利用させている。この通学を実現させるために、クロックさんは2年を費やしたと取材に語っている。バス通学は片道およそ45分。ダウンタウンにあるコンドミニアムの自宅の窓からは、子供たちが乗車するバス停を見ることができるし、下車するバス停は学校の目の前にある。さらに子供たちが持っている携帯電話で、クロックさんは彼らの現在位置を常に把握することもできる。

 子供を育てるということは、最終的に親離れさせることであり、子供たちがどの範囲だったら新しいことに挑戦できるかを見極めるのも、親の大事な役目と語るクロックさん。しかし、この件は子供省の知るところとなり、調査されることに。役所には、もっと大局的にものごとを見てほしかったと、落胆しているクロックさん。

 1週間に及ぶ調査の結果、10歳未満の子供を親の目の届かないところに置くことは許されないとの結論が出された。それがバスに乗るのであれ、近所で自転車に乗ったり、近くのコンビニへ歩いて買い物に行ったりするのであってもだ。クロックさんによると、当局はこの結論を、BC州の裁判所の決定ー8歳未満の子供にはひとりで留守番させてはならないーに基づいて出したと説明しているという。さらにオンタリオ州のように、親の監督が必要なくなる子供の年齢を16歳にしている例も引き合いに出している。一方で親の監督が必要な年齢は、法的には明示されていないことも報告書の中で明らかにしている。

 ブリティッシュ・コロンビア州大学で人口と公衆衛生を教えるマリアナ・ブルッソーニ教授は、現代は過保護が当たり前になりつつあると指摘。しかし、それは子供たちが新たなことに挑戦したりリスクを取ったりする機会を奪い、自立心の確立に悪影響を及ぼすと説明している。

 また教授は、バスのほうが乗用車よりも安全だということも強調している。2009年から2013年の間に、バスに乗車中死亡した14歳以下の子供は皆無だったのに対し、乗用車では106人の同年代の子供が死亡しているという。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。