2017年9月7日 第36号

 アルバータ州に住む男性のもとに、ハリケーンの被害を受けたアメリカ・テキサス州の町から救助の依頼がはいった。

 この男性は、エドモントンの南にある人口1万8千人ほどの町ボーモントの役場に勤めるシバ・クマー・シャンマガムさん。町のソーシャルメディアに送られてきたメッセージに対応していたとき、町の消防署のフェイスブックに助けを求める書き込みがなされたのを見つけた。

 そこには「テレルの住宅が浸水、救助求む」とあった。しかしシャンマガムさんが住むボーモントにはテレルという通りはなく、そもそもここ1週間近く雨は降っていなかった。しかしシャンマガムさんはすぐに、これがハリケーンの被害を受けたアメリカ・テキサス州ヒューストンのそばにあるボーモントからのメッセージだと気づいた。そこにはテレル・アベニューもあった。

 娘とその家族がこの場所に住んでいるという、同州ダラスに住む母親が、娘一家を救いたい一心であわてて書き込みを入れたのが、その町からは3800キロメートル離れた、アルバータ州のボーモントの消防署のフェイスブックだった。

 シャンマガムさんはすぐにテキサスのボーモント市の救急サービス課にコンタクトを取り、同消防署と直接話すことができた。同消防署はこの家族からの救助依頼を受け取っていなかったため、シャンマガムさんが家族との交信を試み、住宅の番地などを聞き出し消防署に伝えた。

 しかし消防隊員はすぐに現地に向かうことができず、そうこうしているうちに日が暮れてきた。シャンマガムさんは家族との通信を維持、彼らを勇気づけた。その家の裏庭には、水から逃れようとする蛇や蜘蛛が集まってきていたという。またシャンマガムさんは、唯一の通信手段の携帯電話のバッテリーを長持ちさせるよう、データ通信機能をオフにするようアドバイスするなどしていた。

 夜になっても救助が来ないことで不安になった家族は、近所まで車で避難しようと思うとシャンマガムさんに伝えたが、これをテキサスの消防署に伝えたところ、その場を動かないよう指示されたため、家族に外へ出ることを思いとどまらせた。

 しかしそれを最後に通信が途絶えた。その夜は家族のことを案じ一睡もしなかったと、取材に語るシャンマガムさん。彼が娘の母親から、全員無事に避難所に移ることができたという知らせを受け取ったのは朝になってからだった。

 

 

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