2017年8月17日 第33号

 サスカチワン州ブラッド・ウォール州首相が10日、辞職を表明した。同日フェイスブックを通じて表明した後、記者会見を開き、党の刷新に時間的猶予を与えるためにも、この時期の辞職がいいと思ったと説明した。

 ウォール州首相といえば、全国の州首相の中でも自身の政策を強く主張することで知られている。

 最近では、昨年連邦自由党政権ジャスティン・トルドー首相が打ち出した炭素税導入に真っ向から反対。環境問題対策の重要性は理解するが、炭素税が解決策になるとは思わないと最後まで抵抗した。

 また2010年には、世界最大のポタッシュ(炭酸カリウム)会社サスカチワン・ポタッシュ・コーポレーションがオーストラリアの企業に買収される話が持ち上がった時には、サスカチワン州だけでなくカナダのためにならないと強硬に反対を表明。当時の保守党政権スティーブン・ハーパー首相はこれを受け買収承認を拒否した。

 サスカチワン州はアルバータ州と並んで天然資源産業が盛んな州。特にポタッシュとウランは世界最大規模。

 記者会見では、自身の政策について誤りもあったが、経済の立て直しなどに力を入れ、医療施設を充実させ、医師や看護師を大幅増員したことや州の人口増加に貢献したことを自身で評価した。

 ただ、原油価格が急落して以降、経済が低迷。そのため、今年3月に発表された予算案では、6億8500万ドルの赤字を計上。公共サービスの大幅削減や2006年以来の州税の引き上げなど、州民に大きな負担を強いる政策が響き、最近の調査では支持率が低下していた。

 それでも全国の州首相の中では最も高い支持率を誇る。「辞職は6月頃に考えていた」と語り、「今の時期に表明をすることで次期党首が次の選挙に間に合うと判断した」と、この日の発表を説明した。ただ明確な辞職理由は最後まで明かさなかった。

 今後のことは決まっていないという。記者会見の中で「サスカチワンでの政治生活に終止符を打つ」と発言したことで、国政への進出を目指しているのでは、と質問されると「全ての政治活動から引退する。そう言うべきだった」と笑った。

 1999年に初当選。2004年保守系サスカチワン党党首に就任、2007年に州首相に就任した。現在51歳。政界から完全引退するには比較的若く、もし本人がその気になれば、その政治手腕は保守党、自由党を問わず声かがかかるのではと推測されている。しかし本人は「政界からの完全引退」を強調した。次期州首相が正式に就任するまで現職を続行する。

 今月4日には16年間続いたブリティッシュ・コロンビア州自由党政権のクリスティ・クラーク州首相が政界を引退。長期政権の州首相の引退が相次いだ。

 

 

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