2017年6月29日 第26号

 ユーコン準州の西端、アメリカ・アラスカ州との国境に近いドーソン・シティのホテルから17日、有名ドリンクの中身である、人の足指が盗まれた。

 同市のダウンタウン・ホテルのラウンジが提供する「サワートー・カクテル(Sourtoe Cocktail)」には、凍傷のため切断され、ミイラ化した人の足指が入っている。この度胸試しカクテルは、特に70年代からはドーソン・シティでのマストアイテムの一つに挙げられてきた。

 言い伝えによると、そもそものきっかけは1930年代、アメリカでは禁酒法が施行されていた時代に遡る。アラスカ州へアルコールを持ち込もうとした密輸業者が、誤って犬ぞりから凍てついた川に落ち足指に凍傷を負った。そこから壊疽にかかるのを防ぐために、兄が斧でその足指を切断した後アルコール漬けにしておいたのだが、それが後年小屋で発見され、それを記念するために「サワートー・カクテル・クラブ」が結成されたのだという。

 そして、このホテルのラウンジでは、現在までに7万人以上が、このカクテルに挑戦してきたという。ところで、このカクテルを飲み干し「サワートー・カクテル・クラブ」に加入するための儀式として、飲み干す時に必ず、唇が、その足指に触れなければならないという決まりがある。そのほか、足指を飲み込んだり盗んだりした客には、2500ドルの罰金が科せられることになっている。

 そんな足指が盗まれたのは当日の深夜ごろ。当時、このカクテルに挑戦したケベックからの観光客が、同伴していたガールフレンドに足指を盗もうかと冗談を飛ばしているところが目撃されている。当人はクレジットカードでカクテル代を支払っており、その明細がラウンジに残されていたのみならず、このカクテルを飲み干した記念として発行される証明書も置き去りにされていたなど、足取りをたどる手掛かりはいくつもあった。

 ホテルから通報を受けたカナダ連邦警察(RCMP)が捜査を開始したが、20日になって犯人から、盗んだ足指をホテルに郵送したという電話が入った。また犯人はホテルにも電話をかけ、口頭で謝罪した。郵送された足指は22日に届き、RCMPが開封したところ、中には足指と謝罪の手紙が添えられていた。またRCMPによると、足指の状態は良好だとのこと。また犯人に対する罰金は、科せられない模様。

 

 

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