2017年6月29日 第26号
ノバスコシア州ケープ・ブレトン島の東海岸にある、人口3万人ほどの町シドニーで21日朝、革ジャンに身を包んだオートバイ集団が、1人の小学生の登校をエスコートした。
この小学生は、10歳になるザンダー・ローズ君。先住民とアフリカ系カナダ人の子供であることや、160センチメートル弱の身長に体重約70キログラムという体格などから、学校で執拗にいじめられてきた。スクールバスに乗ると、同乗していた児童に服を引き裂かれたり、殺すと脅されたりしたこともあったという。ローズ君の母親は小学校や教育委員会、また他の児童の親などにも助けを求めたが、どれもうまくいかなかった。
そんな彼女が連絡を取ったのは、米国の子供支援団体「子供の擁護者(Defenders Of The Children)」。そして、シドニーに最も近い同団体の支部(ニューブランズウィック州フレデリクトン)が、地元のオートバイクラブにローズ君の支援を依頼した。ケープ・ブレトンでオートバイツアーなどの企画運営も手掛けるマイク・バッソさんは、これに応じ「革と鉄の守り」を計画。さまざまなオートバイ同好会やライダーらが彼の呼びかけに応じ、ローズ君登校の朝には150台以上のオートバイが集まった。
ローズ君を応援する近所の人たちが見守る中、バッソさんたちはローズ君をオートバイに乗せて隊列を組み、エンジンの爆音をとどろかせながら、彼の通うハーバーサイド小学校に向かった。学校に到着すると、ライダーたちはオートバイから降りて隊列を組み直し、そのまま校舎入り口まで行進した。バッソさんによると、ローズ君はとても興奮していて、彼は長い学校生活の中で今日初めて、学校に行きたいと心から思えたと、取材に語っていた。
一方、学校や教育委員会関係者は、個人情報の観点からローズ君の件に、どのように対応してきたかは話せないとしている。しかし、いじめ問題は最重要課題として扱っていると付け加えている。
ケープ・ブレトン地区では父の日に、13歳になる少女がインターネット上のいじめを苦に自殺し、今年に入って3人目の同地区での犠牲者となった。バッソさんは、こうした悲劇を繰り返さないために、もっと努力が必要だと語っていた。