2017年6月22日 第25号
カナダ統計局は13日、2015年に警察に届けられたイスラム教徒へのヘイトクライム(憎悪犯罪)が前年比で60パーセント増加したとの統計を発表した。
2014年には99件だったが、2015年には159件に増加している。しかし国内のイスラム教徒関連団体は、警察に届けられていない事件も数多くあると指摘している。
イスラム教徒以外では、ユダヤ教に対する犯罪が213件から178件に減少、黒人に対しては238件から224件に減少しているが、件数自体はイスラム教徒へのヘイトクライムよりも多い。
性差別による件数は155件から141件とやや減少。しかし、ケガを伴う、より暴力的な事件が増加傾向にあると報告している。
ヘイトクライム全体としては、2015年は1362件で前年より67件増加。ただカナダ統計局は、今回の調査結果は必ずしも事実を反映していない、多くの事件は警察に届けられていないと報告している。
イスラム教徒へのヘイトクライムが増加した要因の一つとして、イスラム教徒関連団体代表は、2015年の総選挙で保守党スティーブン・ハーパー首相が市民権取得式典でイスラム教徒女性が顔全体を覆って出席していることを問題視したことも、イスラム教女性を攻撃する理由の一因となったと指摘した。
2015年に警察に届けられたヘイトクライムのうち、人種的なものが48パーセント、宗教的なものが35パーセント、性的なものが11パーセント。さらに、全国10州のうち8州で警察に届けられたヘイトクライムが前年より増加。地域別では、アルバータ州で139件から193件に急増している。特に、イスラム教への犯罪やアラブ、西アジア諸国、黒人、ユダヤ教へのヘイトクライムが増加している。アルバータ州で増加している要因として低迷する経済事情があるのではと統計局は説明している。
ラルフ・グッデール公安相は政府としては性差別や宗教差別への取り組みを強化していくとし、そのためには正確なデータが必要との認識を示した。「世界に先駆けて、世界で最も多元的な、寛容で、開放的で、順応的な国家を国民全体で目指していく必要がある」と語った。