2017年6月15日 第24号

 カナダ銀行は8日、金融システム報告書を発表、国民の負債が増額していること、国内2大都市の不動産価格が相変わらず上昇し続けていることが、国の経済と国民の家計を非常に不安定にしていると警鐘を鳴らした。

 トロントとバンクーバーの不動産事情が相変わらず過剰評価され高騰を続けている実情に、もし価格の適正化が起こればカナダ経済と家計を直撃すると報告。特に、無保険の住宅ローンの割合が増え、住宅ローンによっては危険を伴うものもあると警告している。

 国民の可処分所得に対する返済負担率は170パーセントに近づく勢いで、過去最高となっているとも報告。負債の約90パーセントが、住宅ローンやHELOC(持ち家の純粋価値を担保にして開く借金の口座)で、不動産関連となっている。

 報告書では、負債の増額率が所得の上昇率を上回る状況が続き、返済負担率が上昇し続ける傾向は、景気後退や住宅価格の下落、金利上昇などの要因で家計を圧迫する危険が高まることを表しており、国全体の経済や金融システムに影響を与えると報告している。

 ただアメリカで起きたような住宅価格の崩壊は、金融制度が健全なカナダでは起こらないだろうとしている。

 7日にはファイナンシャル・コンシューマー・エージェンシー・オブ・カナダが、住宅ローンに関する報告書を発表。住宅ローンを抱えた上にHELOCを持つ世帯が2011年から40パーセントも増加していると報告。持ち家のある国民がHELOCをATM代わりに使っている傾向があり、返済能力以上の負債を簡単に抱える事態になっていると警鐘を鳴らしている。

 2016年のHELOC負債残高は2100億ドルに達し、口座数は国内で300万口座あり、平均負債残高は7万ドルになると報告している。

 カナダ銀行は12日、現在0・5パーセントの低金利を維持するか見直すことを示唆した。キャロライン・ウィルキンズ副総裁がマニトバ州ウィニペグでの講演で、今年第1四半期の経済成長が思った以上に好調で、経済成長が拡大している兆しが見えるとして、金融政策を見直すことになるだろうと語った。今回の副総裁の発言が、2018年以降と予測されていた金利引き上げ時期が今年中に早まるのではとの予測から、この日カナダドルが上昇した。カナダ銀行は7月12日に金利を発表する。

 

 

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