2017年6月15日 第24号

 連邦新民主党(NDP)は10日、ニューファンドランド・ラブラドール州セント・ジョーンズで党首選候補者による討論会を行った。

 2015年10月の総選挙で議席数を大きく減らしたNDPは、昨年の党大会でトーマス・マルケア党首の交代を投票により決定。今春、ようやく本格的な党首選に突入した。

 現在立候補しているのは、マニトバ州選出ニッキー・アシュトン議員、オンタリオ州チャーリー・アンガス議員、ケベック州ガイ・キャロン議員、ブリティッシュ・コロンビア州ピーター・ジュリアン議員の連邦議員4人とオンタリオ州議会ジャグミート・シン議員。

 討論会では、気候変動対策や税制改革、所得格差の是正、自由党政権が最近発表した防衛費増額や国際貢献などの外交政策への批判で、意見の応酬があった。

 さらに、現在最も注目されているキンダー・モーガン社のトランスマウンテン・パイプライン拡張計画でも激論が交わされた。

 同パイプライン拡張計画は、アルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市までのパイプラインを拡張し、現在の3倍のオイルサンドを輸送してアジア市場へと輸出するための計画。輸送量が3倍に増加すれば、BC州沿岸のタンカー数は7倍に激増すると試算されている。

 この計画は連邦自由党政権、BC州自由党政権がすでに承認したが、今年5月のBC州議会議員選挙で、拡張工事停止を公約としたBC州NDP(BCNDP)とグリーン党が合わせて44議席を獲得。約60パーセントが反対を表明した党を支持したことで、もともと同計画には地元の根強い反対があったが、反対派が多いことがより鮮明になった。

 この選挙では、自由党が43議席と最多議席を獲得したが、過半数に届かず少数派政権が誕生することになった。しかしBCNDPとグリーン党が政策で協力することに合意したため、BCNDP政権が誕生する可能性が高くなっている。

 討論会では、シン議員が、同計画を推進しているアルバータ州のNDP政権と新政権となるだろう反対派のBCNDP党首と話し合いを持った後に自身の気候変動政策を発表すると語った。BC州選出のジュリアン議員は、BC州ではキンダー・モーガンは大きな選挙争点だったと語り、「60パーセントの州民がキンダー・モーガン反対を掲げる党に投票している。もし仮に海岸沖で一つでも事故があれば、美しい海岸は何世代にもわたって汚染されてしまう」と反対を主張。パイプライン政策でNDP両党首と話し合いを持つという他人事のようなシン議員の発言に反論した。

 トランスマウンテン計画については、連邦NDPは厳しい立場に立たされている。連邦NDPとしては反対の立場を取っている。しかしアルバータ州NDP政権は、原油価格急落以降、経済が不安定となった州の事情があり、アメリカ以外の市場へのオイルサンド輸出は州経済復活の絶対条件として強行に推し進めている。一方、BCNDPは計画を承認した自由党政権の対抗馬として反対を前面に押し出して選挙戦を戦い、大きく議席を伸ばした。さらに同じく反対派のグリーン党と協力して少数派政権を実現しようとしている。

 討論会は今後、サスカチワン州サスカトゥーン、BC州ビクトリア、ケベック州モントリオール、BC州バンクーバーで行われる予定。NDP党首は今秋に決定される。

 

 

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