2017年6月8日 第23号

 ノバスコシア州のコーヒーショップで、車が故障してトレイルランの試合に出られなくなりそうになったチームに、店員が自分の車を貸し出し、チームの参加を実現させた。

 場所は、同州ケープ・ブレトン島の人口千人に満たない町バデック。ここのコーヒーショップ、ティムホートンズに立ち寄ったのは、ダルハウジー・デンジャラスリー・アクセレレーティブ・レディーズ(Dalhausie Dangerously Accelerative Ladies)。町から20キロメートルほどのところで行われるカボット・トレイル・リレー・レースに向かっていたところだった。しかしその駐車場で乗っていたバンが故障し動かなくなった。このレースは17ステージに分かれた270キロメートルのコースを24時間で走破するというもので、この車がなければレースの完走は不可能だった。

 困り果てていたチームの様子を、ドライブスルーの受け渡し口からしばし見ていた店員のメラニー・ランドリーさんは、そこから彼女らに自分のミニバンを使っていいから、とりあえず店内に来るよう呼びかけた。

 最初は何を言われているのか分からなかったと、チームメンバーのリサ・リチャードソンさんは取材に答えている。何秒かの空白ののち、彼女が発した第一声は、「あなた、誰?」だった。まったく面識のなかった女性からの突然の問いかけだったから、無理もない。

 一方でランドリーさんにとっては、それほど大それたことではなかったという。彼女は、ほぼ町の中心部に住んでおり、この職場から家までも若干2キロメートルほどだった。もし車が必要だとしても、自分を乗せてくれる友人なら何人もおり、自分には何も問題ないが、この町に知り合いも誰もいない彼らには助けが必要だったと、ランドリーさんは答えている。また、彼女自身もこのレースに出場したことがあった。

 結局、リチャードソンさんらはミニバンを借りることに。車のキーをランドリーさんから受け取り、店を出ようとする際、同じ店で働いていたランドリーさんの妹が、せめて相手の携帯電話の番号だけでも聞いておくようにアドバイス、ランドリーさんが番号を受けとると、チームの女性たちはレースに向け出発した。

 道中、ミニバンの中では、この出来事の話で持ちきりだったという。さらにレース最中にも、この話題をまわりの人に広めていった。ノバスコシアに引っ越してきてもうすぐ3年になるというリチャードソンさんは、すべての人を歓迎するケープ・ブレトンの気風に惚れ込んでいるようだった。

 そしてリチャードソンさんらのチームは、見事レースに優勝。このミニバンの出来事が、彼女らに『何でも可能』というパワーを与えてくれたのが、その理由だと話していた。

 

 

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