2017年3月30日 第13号

 自由党政権が22日、予算案を発表した。タイトルは「安定した中間所得層の構築」。特に目新しい内容はなく、これまで政府が発表してきた経済方針を具体的に数字に表した内容となった。

 中間所得層を強化するということで、将来的な産業構造の変化に対応するための職業訓練や技術革新などの分野に多くの予算が充てられた。女性支援として、不妊治療への免税対策強化、育児休暇期間の延長、チャイルドケアの充実、女性起業家支援などが盛り込まれた。ただ、女性起業家支援については具体的な予算額は示されなかった。

 また増税策として、酒税・タバコ税の引き上げや、公共交通機関使用に対する税額免除対策の廃止も盛り込まれた。

 ビル・モルノー財務相にとって2回目の予算案は、昨年ほどインフラ整備や経済対策を強調した予算案とはならなかった。その一つの要因にアメリカのトランプ政権の動きがある。

 1月に就任して以来、現在でもトランプ政権の経済対策の先行きが見通せないため、とりあえずはアメリカの動きを静観視する予算案となったとみられている。アメリカはカナダ最大の貿易相手国で、アメリカ政府の経済政策、特に北米自由貿易協定(NAFTA)の変更やトランプ大統領が主張する法人・個人への減税、環境対策廃止などは、カナダ経済に大きく影響するとみられている。

 今回の予算案では2015年までに30パーセントの貿易拡大を実現するという目標も盛り込まれているが、欧州連合(EU)との自由貿易が今年中に実施される見込みとはいえ、相変わらずの原油価格低迷や貿易最大相手国アメリカの予測不可能な動きなど、貿易拡大目標達成がどれほど現実味があるかは不透明とみられている。

 来年度予算案での負債額は285億ドルと予測。昨年11月の予測278億ドルから増加している。

 野党第一党保守党ローナ・アンブローズ党首は、今回の予算案は国民の生活費が増すだけと批判、新民主党(NDP)トム・マルケア党首は予算案を実行に移すのが遅すぎると批判した。

 

 

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