2017年3月30日 第13号

 米ドナルド・トランプ大統領は24日、キーストーンXLパイプライン建設計画を承認したと発表した。ホワイトハウス大統領執務室で署名したトランプ大統領は「トランスカナダ社は、これでようやく長らく待たされた計画を効果的に迅速に完成することが許された」と関係者を伴った記者会見で語った。

 キーストーンXLパイプライン建設計画は、トランスカナダ社が手掛けるカナダのオイルサンドをアルバータ州から米テキサス州まで運ぶ全長1897メートルのパイプライン建設計画。2008年に計画され着々と準備が進められていたが、2015年バラク・オバマ前大統領が、ガソリン価格を安くする以外に国民に利益がなく、温室効果ガス排出量を増やすだけ、と計画の承認を拒否。事業は停止した状態だった。

 しかし今年1月トランプ大統領就任後、パイプライン建設計画承認を示唆。トランスカナダ社が承認の再申請を行っていた。

 今回の発表についてカナダ政府は歓迎している。天然資源省は「カナダ政府はキーストーンXLパイプラインを常に支持してきた。今回のアメリカの決定を歓迎する」と声明を発表した。ジャスティン・トルドー首相も同日の囲み取材で「アメリカからの発表を歓迎する。カナダの天然資源を、安全に責任を持って海外市場に輸出することは、カナダの雇用を促進する上で重要との認識をずっと持っている」と歓迎する意向を語った。

 カナダ政府は昨年11月、国内のパイプライン建設計画で、アルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州北西部キティマットまでのノーザン・ゲートウェイ・パイプイラン建設計画の白紙撤回を発表。一方で、天然資源を海外市場へ輸出するために、東海岸へ延びるイースト・パイプラインを推進し、BC州バーナビー市までのトランスマウンテン・パイプライン拡張計画は承認。アメリカへのパイプライン建設も推進している。

 キーストーンは完成すれば1日80万バレルのオイルサンドを運ぶことになる。この計画には反対も根強い。環境活動団体は、どんな手を尽くしても計画を阻止する、とすでに声明を発表している。

 さらに、大統領の承認で第一歩は踏み出したものの、これから越えなければならないハードルは多いと専門家は語る。特にネブラスカ州での反対は強く、州での承認が必要となる。トランプ大統領は「州知事に直接電話する」と語ったが、モンタナ州やサウス・ダコタ州でも反対は強く、さらに、パイプライン建設計画用地となっている土地所有者からの買収も今後進めていく必要がある。専門家は「どんなに早くても完成するのは2019年初め」と予測している。

 

 

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