2017年3月23日 第12号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー水族館の海洋汚染研究課では、いわゆるマイクロプラスチックによる海洋汚染の原因解明に挑んでいる。

 マイクロプラスチックとは、直径5ミリメートル以下のプラスチック片のことを指す。同課課長ピーター・ロスさんは、これは化学汚染ではなく物理的汚染であり、今までの海洋汚染とは全く別のものだと、取材に説明している。

 最近BC州沿岸で行われた調査では、1立方メートルの海水中から2万5千個のプラスチックの破片や繊維が検出されたという。これらはプラスチック製品ースーパーのレジ袋、タバコのフィルター、発泡スチロールなどーが徐々に崩壊していった結果だが、ロスさんは意外なものも、その原因になっていると指摘する。

 それは、フリースなどの化学繊維の衣類が洗濯されるときに出る繊維だ。セーター一枚を洗濯した場合、その排水の中には、最大で1万本もの微細繊維が含まれ、そのまま下水道に流れ込むと、ロスさん。

 しかし、一枚一枚のフリースが、最終的にどのくらいの規模で海洋汚染に寄与しているかは、まだ明らかにされていない。ロスさんらは現在、浄水場に流れ込む下水と、処理後にフレーザー川に放出される処理済みの水のサンプルに、それぞれどのような種類のマイクロプラスチック類が、どれくらい存在しているかを調査している。その調査結果によっては、浄水場の処理方法の変更を促すことになるかもしれない。

 プラスチック類による海洋汚染は世界的な問題となっており、ある研究によると、その海に流れ込む量は、毎分ゴミ収集車1台分になっているという。また、この状態が続けば、2050年には地球上の海に住む魚の数量よりも、プラスチックゴミの数の方が多くなるとされている。

 この問題に取り組むため、バンクーバー水族館では最近32万5千ドルを投じて、犯罪捜査などにも用いられる赤外線分析器を導入した。これを用いれば、どのような種類のプラスチックゴミであるかを、より正確に突き止めることができ製造側へのアドバイスも可能になるという。

 バンクーバーに本社がある非営利アウトドア用品メーカー、マウンテン・エクイップ・コープ(MEC)は、自社製品が環境に及ぼす影響を削減する努力を長年続けてきている。その一環として、ロスさんの研究に5万ドルの寄付も行っている。マイクロプラスチックによる汚染は、同社やパタゴニアといったアウトドア用品メーカー大手でも、取り組むべき問題として認識されてきていると、同社は取材に語っている。

 同社の製品試験所で取材に応じた製品責任者ジェフ・クロックさんは、製品の素材を変えたり、製造方法を変えたりして、この問題の上流にいる生産者として、できることに取り組んでいると説明。世界で何十億ドル規模となる服飾業界が、この問題の解決に寄与できることは間違いないが、研究が十分進んでいないため、どう取り組めばいいのか分からないのが現状だと語っている。

 同州バンクーバー島にあるバンクーバー・アイランド大学ナナイモ校の博士サラ・ドューダスさんの研究グループは、BC州沿岸部の各地から採取したカキの内臓を溶かし、どれくらいのマイクロプラスチックが蓄積されるかを調査した。極めて根気のいる、この研究で分かったことは、ほとんどすべてのサンプルにプラスチック繊維が含まれていたことだ。

 こうしたプラスチック汚染が、実際のところ、自然環境や人体にどのような危険性を及ぼすのかは、分かっていない。しかしドューダスさんは、この研究をその端緒にしたいとしている。

 

 

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