2017年3月23日 第12号

 ブリティッシュ・コロンビア州サイモン・フレーザー大学で文化地理学を教える教授ポール・キングスバリーさんは、研究室の大学院生らと超常現象を追う人々を対象とした研究を行っている。

 4年プロジェクトのこの研究は、今年で2年目を迎え、先週には中間報告を行っている。キングスバリーさんらが調査しているのは、いわゆるゴースト・ハンターやUFO愛好家、またサスクワッチ捜索者のグループ。

 キングスバリーさんが、この研究を始めた動機は、人々がどうして、このような怪しげなサブカルチャーに魅せられるのかを調べたかったから。

 彼らはゴースト・ハンター・グループにインタビューしたり、UFO学会やサスクワッチ・サミットに出席したりした。またBC州内で実際に行われた幽霊調査の現場にも9回立ち会った。

 そんなゴースト・ハンター・グループのひとつが、同州バンクーバーに拠点を置く北方超常現象調査所(Northern Paranormal Investigations)。この調査所を仲間と設立したニッキー・パターソンさんのまわりでは、子供のころから不思議なことが起こっていた。新築のアパートでは、食器棚の扉が勝手に開いたり閉まったりしたし、別の家では夜中に何度も玄関の鍵が開いていたり。彼女を悩ます怪現象について、10代の頃には図書館以外には何も解決の糸口を探る手立てはなかった。

 そんな自分の体験をもとに、同様な怪現象にさいなまれている人々の助けになれる存在でありたいと、彼女は、この調査所の設立に加わった。

 ゴースト・ハンターが行う幽霊調査は、多くの場合無料。調査を行うことで依頼主に安心感を与えていると、キングスバリーさん。パターソンさんの調査所が行った調査でも、多くは科学的な説明がつくものだったという。しかし中には、目の前に突然白い物体が現れ顔をはたかれた例や、何かに体を触られている感覚を覚えた例など、説明できないものもあった。

 彼らは調査後に発見事実を報告するセッションを開く。ただし、そうした録画や録音などの事実を提示し、考えられる論理を紹介するのみで、実際の現象がどうして起こったのかを具体的に説明することはしない。論理的に説明がつかない事実があったとしても、それが、すぐさま幽霊の存在を肯定する証拠とはならないと、同調査所の共同設立人ダリル・ピアソンさんは説明する。

 キングスバリーさんによれば、幽霊やUFO、サスクワッチといった超常現象は、それを追いつづける人々にとって最適の対象だという。こうしたものは常に手の届かないところにあり、だれも研究室などに持ち込んで調べることができないからだ。

 

 

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