2017年3月9日 第10号

 ヌナブト準州の中央部、北極圏内の村クガールクにある唯一の学校が、火事により焼失した。人口1000人足らずの同村は、ハドソン湾よりさらに北、北西航路につながるブーシア湾の南端に位置し、同準州の州都イカルイトからは北西に1100キロメートルほどの位置にある。

 不審火が原因とみられる火事は、2月28日深夜に発生。消火活動はマイナス60度という想像を絶する寒さのためはかどらず、鎮火したのは1日の朝になってからだった。

 けが人が出なかったのが不幸中の幸いと村の関係者は話しているが、村に適切な消火設備があれば消火できたかもしれないと、悔やんでもいる。

 また火事は隣接する村役場やディーゼル発電機、およびその燃料タンクにも延焼する危険性もあった。村全体が暖房を電力に頼っているため、もし発電施設が機能停止に陥れば、村は非常事態になっていた。

 多くのヌナブト準州のコミュニティの例にもれず、クガールクでも若年層人口の割合が極めて高い。村の人口の約30パーセントにあたる310人の子供たちが、幼稚園から12年生として学校に通っている。また、学校は45人のスタッフを抱えている。

 村では授業を続けるための場所確保に奔走している。コミュニティホール、教会、北極圏カレッジ、村役場などがその候補に上がっている。また学校の体育館も焼け落ちたことが、村民に大きなショックを与えているという。

 こうした遠隔地のコミュニティにある学校が焼失したのは、同村が初めてではない。同準州バフィン島の南西部に位置する、人口1300人あまりの村ケープドーセットでも2015年に、学校が放火により焼失している。5人の青年が訴追され、一人に有罪が確定している。新校舎はまだ竣工していない。

 

 

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