2017年2月16日 第7号
国会では14日、新民主党(NDP)が提出した、政府の選挙制度改革断念と公約違反への謝罪を求めた動議が自由党の反対多数で否決された。
選挙制度改革は自由党の選挙戦時からの公約。政権を取って以降もトルドー首相は必ずやり遂げると強調していた。昨年には党派を超えた議員で構成された諮問委員会で改革案について会議が開かれ、提案もされている。
しかし今月1日、政府は選挙制度改革を断念すると発表した。首相は、制度を改革するか、どの制度を採用するかで、民意が得られないと説明した。以降、国民から怒りの声が上がっている。
国会では首相は「(制度改革を)前進させる明確な道が見えない」と発言。制度改革によって政府がカナダを不安定にするのは無責任と語った。
諮問委員会の一員だった新民主党(NDP)ネイサン・カレン議員は、国会後の記者会見でトルドー首相を「嘘つき」と非難した。同じく委員会メンバーだったグリーン党エリザベス・メイ党首も「非常にショック」とツイートした。
現在カナダは1選挙区1議員の小選挙区制を採用している。トルドー首相は2015年の総選挙時から、今回がこの制度を採用するのは最後、2019年は新制度になると、選挙制度改革を公約としていた。自由党が政権を取ってもその発言は変わらず、諮問委員会も設立した。
変化があったのは昨年12月。当時のマリアム・モンセフ民主機構相が、諮問委員会が提案した制度改革前の住民投票実施を却下。必要がないと一蹴した。さらに同相は、こうした意見しか出せない諮問委員会は「働き方が足りない」と国会で批判して、翌日に発言を謝罪する騒動も起きた。
トルドー首相は今回の改革断念の決断について、党への影響があると覚悟しているが全ては自分の責任として受け止めると記者会見で語った。
しかし国民の怒りは収まりそうもない。7日には署名活動が開始された。11日にはトロントやバンクーバーをはじめ、国内20都市以上で選挙制度改革断念へのデモ活動が実施された。
現行の小選挙区制度は総得票率が40パーセント以下でも過半数の議席を獲得できる。2015年総選挙では39・5パーセントの自由党が338議席中184議席を獲得して大勝した。逆にグリーン党のような小政党は得票率があっても、実際には議席を一つしか確保できないという不公平さがある。それを改善するというのが自由党の選挙制度改革だった。