2017年2月9日 第6号

 ケベック州ケベック市のモスクで1月29日に起きたテロ事件で、死亡した6人のうちの3人の葬儀で読み上げられた追悼スピーチが、世界中で反響を呼んでいる。

 スピーチを行ったのは、イマーム(指導者)のハサン・ギレさん(64歳)。葬儀の準備に追われていたギレさんは、スピーチの原稿を用意する時間がなかったため、壇上では心のままに喋ったが、そのために多くの共感を呼んだのだろうと、取材に語っていた。

 1974年にレバノンから移住、リタイアするまでは航空業界の仕事に携わっていたギレさん。同州モントリオールの南、セントローレンス川の対岸のサン・レミには果樹園を持っており、そこでラマダン(断食月)のイベントやピクニックなどを開いてきたりもした。

 そんなギレさんにスピーチの依頼が来たのは、イスラム教コミュニティが抱く悲しみや懸念を、感情的や攻撃的にならずに発信できる人物を探していたからではないかと、説明している。

 スピーチでギレさんは、今回の事件で犠牲となったのは、命を落とした人とけがをした人、そして現場に居合わせた人、ケベック市民、さらにカナダ人だが、銃の引き金を引いた本人もまた、犠牲者だと語った。銃弾を人々の頭に打ち込む前に、そんな銃弾よりもっと危険なもの(考え)が、誰かによって容疑者の頭に埋め込まれたのだとギレさん。

 そんな彼のスピーチの書き起こしがインターネット上のサイトに載せられると、瞬く間に世界中から支持する声が寄せられた。『ハリーポッター』シリーズの著者J・K・ローリングさんも自身のツィッターにそのリンクを貼り、「この上ないほどの慈悲に満ちた、ハッサン・ギレ指導者(イマーム)の言葉。ケベック市のテロ事件犠牲者の葬儀にて」とコメントしている。

 

 

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