2017年2月9日 第6号

 再開した国会で、1月27日に米ドナルド・トランプ大統領が発令したイスラム圏中東・アフリカ7カ国出身者の入国一時禁止の大統領令について、1月30日、新民主党(NDP)トム・マルケア党首が首相はこの入国禁止令について非難すべきだと詰め寄った。

 ジャスティン・トルドー首相は、大統領令の翌日にツイッターで「カナダは難民を歓迎する」という趣旨のツイートを発信したものの、大統領令についての非難的な発言は一切行っていない。国会でもマルケア党首の質問に対し、カナダの寛容な受け入れ態勢を繰り返しただけで非難する発言はなかった。

 だがカナダ政府はこの大統領令の対応に追われた。カナダ市民権、永住権を保有する7カ国出身者への影響を確認したり、31日には党派を超え、議員が大統領令への対策を協議する緊急会議を招集したりと振り回された。

 大統領令の影響は、連邦地裁の一時差し止め命令により、国内ではやや落ち着いたが、対象となる7カ国出身のNEXUS(米加で合意している国境通過のための事前登録制度)保有者が、明確な理由もなくアメリカ政府から登録失効の通知を受けたり、国境を越えて米国から難民がマニトバ州に入国したりと、まだ続いている。

 トルドー首相が大統領令への直接の非難を避けている理由に、アメリカとの関係に余計なひびを入れる必要がないとの判断があるとみられている。ロイターカナダ電子版は、首相は先週中にもアメリカを訪問する予定だったが、先月29日にケベック州ケベック市で起きたモスク襲撃事件のため取り止めとなったという知人の言葉を伝えている。今週は防衛大臣、外務大臣、財務大臣がアメリカを訪問する。

 

 

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