2017年1月26日 第4号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのレストランが、アザラシ肉を使った料理をメニューに載せたところ、非難や脅迫を受ける事態となった。

 このレストランは、同市グランビルアイランドにあるエディブル・カナダ(Edible Canada)。ちょうど20日から始まった、市内の多くのレストランが特別価格のコースを提供するイベント「ダイン・アウト・バンクーバー」に向け、ニューファンドランド産のアザラシ肉の料理をオプションとして用意することにしていた。

 カナダ特有の素材を使った料理に力を入れている同レストランだが、イタリアのパッパルデッレ・パスタのトッピングとしてアザラシ肉を使ったこのメニューは、社長のエリック・ペートマンさん自身が考案した。

 ペートマンさんは何カ月も前から、アザラシ肉の使用について熟考を重ねてきた。その上で、アザラシ猟はその毛皮が目的で、残った肉はほとんど捨てられることから、アザラシ肉は持続可能な食材であるとの結論に達し、メニューに加えることにしたという。さらに最近はアザラシの頭数が際立って増加していることも、彼の決定を後押ししたと、ペートマンさんは取材に答えている。

 一方、カナダのアザラシ猟はこれまでにも世界的な論議を引き起こしてきた。有名人の中にも、ポール・マッカートニーさんのようにアザラシ猟が非人道的・虐待であるとして、アザラシ猟禁止のキャンペーンを行ってきた人もいる。それに対しアザラシ猟関係者は、これはカナダの伝統であり、また魚資源の保護につながると反論している。

 バンクーバー動物愛護協会はメディアの取材に対し、商業アザラシ猟はいまや風前の灯であるのに、その肉がトレンディーな食材であるかのような印象を与えて、業界自身が復活するような事態は見たくないとコメントしている。さらにアザラシ肉は持続可能な食材かも知れないが、人道的な食材とは言えない、カナダ東海岸のアザラシ猟は動物虐待の最たる例として世界中に知られていると付け加えている。

 いずれにせよ、エディブル・カナダがアザラシ肉の料理を出していることが知れ渡ってから、店にはスタッフへの暴力や店への破壊行為を示唆する脅迫が、ある人物から届くようになった。最終的には警察に通報して解決をみたが、ペートマンさんはアザラシ肉料理を注文した人には、必ず料理を出すと固い決意を表している。

 店では警備員を雇い、また警察も想定される事態に備えているという。ペートマンさんは、これからも何事も起こらず、またこのメニューをきっかけに人々が普段口にしているものが一体どこから来ているのか、といったことを話題にしてくれることを望んでいる。自分は、自分の体を維持してくれるものの出自を理解していることを誇りに思っている。それが牛かラムか、はたまた豚であってもアザラシであっても違いはないと信じていると付け加えている。

 

 

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