2017年1月26日 第4号

 ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドに住むジェシカ・リウさんが、イギリスの高級スポーツカー、アストンマーチンDB9を購入したのは、2015年6月のことだった。ちなみにこの車、有名なスパイ映画『007』の中で主人公ジェームス・ボンドが同じタイプの特別仕様車を運転しており、リウさんが購入したのは、それを模した100台のみの限定生産車だった。

 新車価格で30万ドルのこの車を、バンクーバーの高級車専門ディーラーMCLからセール価格の20万ドルで購入したリウさんだったが、2015年の12月に自宅近くの道路でハンドル操作を誤り、道端の大きな石に右前輪から突っ込んでしまった。修理を依頼されたディーラーは、この車をバンクーバーの高級車専門修理工場バラード・アウトシュトラーセ(BA)に依頼した。

 高級車の常で、その部品代や工賃も高額だ。塗装は、映画『007』の23作目となる『007スカイフォール』にちなんだ特別色・スカイフォールで、一缶900ドル、ヘッドライト(片方のみ)が7000ドル。さらに前輪ブレーキのローターは左右とも交換する必要があり、これが3万ドル(プラス工賃)。また車体の骨格の一部ともいえるサブフレームも交換(2万5000ドルプラス工賃)などなど。当初は2万4000ドルと見積もられていた修理費は、あっという間に10万ドルを超えてしまった。さらにBAは、保管費用を1日あたり200ドル課金しており、今年1月9日の段階で1万8000ドルとなっていた。

 ビジネスでカナダと中国を頻繁に行き来するリウさん、この見積もりに納得できず、「1セントたりとも払うつもりはない」と取材に電子メールで答えている。彼女は、ブレーキローターは片側しか破損していないのに、どうして両方交換しようとするのか、サブフレームはもっと廉価なものが手に入るなどとして、ディーラーも修理工場の見積もりも信用しないと息巻いている。さらにこの車自身、安全に運転できる車ではないとコメントしている。

 車をリッチモンドの修理工場に持ち込んだリウさんは、サブフレームがより安い値段で売りに出されていることを知らされたが、同時にこの重要部品は、メーカー認定の工場でしか購入できないこともわかった。BC州内では、先のBAが唯一の認定工場だった。しぶしぶ車をBAに戻したのが昨年の7月。それ以来車はそこに置きっぱなしになっている。そして昨年10月以来、双方は弁護士を立てて争っている。

 ブレーキローターに関して修理工場側は、この車のものは金属製ではなく、時速250キロメートル以上の高速走行に耐えうるカーボンセラミック製のため、ダメージを受けたものは交換する以外方法はなく、また左右のブレーキの効きが異なれば安全性に大きな支障をきたすため、両方を同時に交換する必要があると説明している。

 

 

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