2016年11月10日 第46号

 生まれてくる子供にカナダ国籍を取得させるために、出産間際に入国・滞在する『出産ツアー』。これはカナダの医療システムに不必要な負荷をかけており、規制すべきだという嘆願書が連邦議会に提出された。

 この嘆願書は、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドに住むコミュニティ活動家、ケリー・スターチャックさんが先月まで集めていたもので、8886人が署名した。これは同市の連邦議会議員アリス・ウォンさん経由で連邦議会に提出されることになっている。

 また、同市スティーブストン=リッチモンド・イースト選挙区選出の連邦議会議員ジョー・ペスチソリドさんは、出産ツアー業界という闇ビジネスがリッチモンドにはびこりつつあることを危惧している。さらに連邦政府はこの問題に対し、既存の法律ー入国に際し虚偽の入国理由を述べてはならないーを適用すれば解決できるとしている。

 嘆願書をまとめたスターチャックさんは、国内で生まれれば自動的にカナダ市民権が付与されるようなシステムではなく、ヨーロッパ各国やオーストラリアのように、市民権を得るためには一定の条件を満たす場合に限るべきだとしている。彼女は、外国人がカナダの医療保険制度の恩恵を受けるために、現在の単純な出生地主義を悪用していると非難している。

 今やリッチモンド総合病院で生まれる新生児の6人に1人は、カナダ国内に住所を持たない親から生まれており、さらにそのほとんどは中国人だという。

 また政府の資料によれば、2015年の時点で出産ツアーの妊婦のための宿泊施設『出産ハウス』が少なくとも26カ所存在することが確認されている。出産ツアー業者のウェブサイトの多くに「そのための最高の条件がそろっている」と、リッチモンド総合病院が紹介されている。

 ペスチソリドさんは、妊婦が入国の際にその目的を偽ったことが明らかになった場合、カナダ国内で生まれた赤ん坊の市民権の剥奪が可能か、またそうすべきかどうかを精査すべきだとしている。

 

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