2016年9月22日 第39号
中国当局にスパイ容疑で拘束されていたカナダ人男性ケビン・ガラットさんが16日帰国した。ガラットさんの家族がブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに到着したと声明を発表した。
ガラットさんはバンクーバー出身で、1984年から妻ジュリアさんと中国に在住、北朝鮮との国境に近い町でコーヒーショップを営んでいた。 しかし2014年8月、中国当局にスパイ容疑で2人とも拘束され、2015年2月にジュリアさんだけ保釈され帰国したが、ケビンさんは拘束されたままになっていた。
ガラットさんの釈放については保守党政権時代からスティーブン・ハーパー前首相が中国訪問の時にも交渉するなど、カナダ政府として働きかけていた。
今回の釈放についてジャスティン・トルドー首相は「ケビン・ガレットさんが無事にカナダに帰国したことをうれしく思う」との声明を発表。また、ガレットさんの帰国に尽力した関係者に感謝の意を表した。
先月トルドー首相は中国を訪問、同国で開催の20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する前に中国首脳と会談し、経済や人権問題と共に、ガレットさんの拘束についても言及したことを当時の記者会見で明かしている。その約2週間後にガレットさんに対する判決が中国の裁判所で下され、強制退去による帰国が実現した。今月21日からは中国の李克強首相がカナダを訪問する。このタイミングでの解放に、中国に見返りを要求されているのではとの憶測があり、それについてカナダ政府関係者は「そうした事実はない」と否定している。
ただ、中国側は中国での逮捕を逃れるためにカナダに逃亡している汚職高官の引き渡しを要求しているのでは、と中国事情に詳しい専門家は語っている。中国はカナダをはじめアメリカやオーストラリアと引き渡し条約を締結していないため、これらの国が汚職中国人高官の逃亡先となっていると中国側が考えている、と専門家は指摘している。