2016年9月15日 第38号

 オンタリオ州トロントに住むビッキー・マカラムさんには、27歳になる息子ジュリアンさんがいる。彼は耳が聞こえず、知的障害と遺伝子疾患を患っており、自宅での家族のサポートなしには生活が困難な状態だ。

 そんな息子のため、マカラムさんはオンタリオ州政府に対して長年、援助の申請を続けてきた。しかし当局からは何の返答もないまま。州議会議員にかけあっても、なしのつぶて。

 かつては補助金を支給されていたこともあったが、それも彼がスーパーで週5時間のアルバイトを始めたとたんに打ち切られた。

 「彼の存在が忘れ去られている」と嘆くマカラムさん。しかし、彼女の息子のケースは決して珍しいものではない。最近オンタリオ州の行政監察機関がまとめた報告書によると、成人を迎えた障害を持つ人に対するサポートの不備により、支援が行われなかったり、虐待を受けたり、また適切なケアを受けられないまま刑務所や病院に送り込まれてしまうケースが後を絶たないという。

 そのような状況の中、マカラムさん夫妻は家を売却し、息子のためにタウンハウスを購入することにした。彼が環境に慣れるまでは一緒に暮らし、可能なサポートやルームメイト探しを行うつもりだという。最終的には、彼が自活できるような、自家製グループホームのようなものを目指す。

 そうして、そのような流れが拡大して同じように障害を持った成人たちのコミュニティが形成され、政府からの支援を得られるようになることを、マカラムさんらは望んでいる。政府にはこうした人々やその家族に対する敬意と、さらなる情報と制度の透明性を高めることを求めている。

 

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