ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドの、大型家具店イケアの近くにあるブリッジポート・インダストリアル・パーク。高圧送電線の下に設けられた全長240メートルあまりの緑地帯は、以前はどこにでもあるような手入れの行き届かない空き地だった。特に送電線の保安上の理由から、これを管理するBCハイドロが伸びすぎた松並木の約半数を切り倒した後は全くみずぼらしい景観だったと、同社の生物学者レニ・ロディックさんは回想する。
この状態を改善したいと思ったロディックさんは、エミリー・カー・デザイン・アンド・アート大学の研究員キャメロン・カルティエさんに相談を持ちかけた。カルティエさんは、パブリックアートを導入して緑地帯を整備することを専門としている。その結果、この場所に花を植えてひとつの「作品」を完成させるとともに、ミツバチなど花粉を媒介する昆虫を呼び込む緑地帯にしようという構想に落ち着いた。
BCハイドロとエミリー・カー大学、またリッチモンド市が共同で昨年春に植えた花々は、ちょうど満開となっている。この場所はバンクーバー空港に着陸する飛行機のルートの真下にあたり、ジェットエンジンの音が絶え間ない。しかしその合間のわずかな静寂の中、多くのミツバチなど昆虫類の羽音があたりを満たしていることがわかる。
この時期にあわせリッチモンド市は、最近減少が問題視されている野生のミツバチに対し、こうした花粉媒介昆虫が好む花を植える取り組みが、どのような効果を与えているかを来訪者に解説するワークショップも行なった。
自宅裏庭の小さなスペースでも、植える植物を変えることでこうした昆虫の繁殖を助けることができると、リッチモンド市で持続可能な自然環境づくりを促進するレスリー・ダグラスさん。また、このインダストリアル・パークはその見本となると話していた。
またロディックさんによると、地上からでは分かりにくいが、何種類かの異なる色の花で作られたこの「作品」は、実はミツバチの羽を模している。バンクーバー国際空港に着陸する飛行機は、その時の風向きによって海側からアプローチしたり陸側からアプローチしたりするが、陸側からアプローチしている日には、この「作品」の全体像を飛行機から確認することができると、ロディックさんは説明している。
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