オンタリオ州裁判所裁判長は21日、マイク・ダフィ上院議員に対する31件の罪について、全てで無罪を言い渡した。

 チャールズ・べイランコート裁判長は、保守党前政権の首相事務所のやり方を「信じられないほど衝撃的だ」と非難し、ダフィ議員は駒として使われただけとの認識を示した。

 ダフィ議員は、2013年に明らかになった一連の上院議員不正受給問題で刑事事件として扱われた4議員のうちの一人。合わせて31件の詐欺罪、背任罪、収賄罪に問われていた。

 4議員の経費不正受給問題の中でも、ダフィ議員の場合は背後に首相事務所が絡んでいたことから非常に複雑で、連邦選挙前でもあったことから国民が高い関心を寄せていた。

 経緯は、ダフィ議員が住宅手当、交通費などで約9万ドルの不正受給があったことが2013年春に明らかになった。その直後、ダフィ議員は自身が銀行から借金をして不正分を返済したと発表。この時点でも、本人は不正をしたとは思っていないと主張していた。

 しかし、この返済した9万ドルは、当時スティーブン・ハーパー首相事務所の首席補佐官だったナイジェル・ライト氏が個人的に支援していたことが発覚。首相事務所も、ハーパー首相(当時)もこれについては一切関係ないと強調した。ところが、のちにダフィ議員が上院で明らかにしたところによると、この件ではライト氏以外にもハーパー首相も承知していたという。ダフィ議員は常に裁判で詳細を明らかにしたいと語っていた。

 この日、2年以上にわたって行われてきたダフィ議員への裁判で全面無罪となったことで、他の3議員についても罪に問われない可能性が出てきた。

 裁判長は、ダフィ議員については判決文の初めから、首相事務所によるシナリオの犠牲者という立場を示唆しており、ダフィ議員がライト氏から受け取った約9万ドルはダフィ議員には何の利益もなく、この行為による利益を得たのは首相事務所側と述べた。

 ダフィ議員の代理人を務めたドナルド・ベイン氏は、「全面無罪」を強調し、検察側の説明が必要との見解を示した。判決後の記者会見で同氏は、「ダフィ議員は約2年半から3年にわたって、カナダの歴史上公人として最も衆目に晒された人物だと思う」とその苦痛を述べた。さらにその後のラジオインタビューでは、弁護側(ダフィ議員側)がハーパー前首相が証人喚問された場合も想定していたことを明かしたが、結局は実現しなかった。

 これでダフィ議員は通常の上院議員としての職務に戻ることになる。不正とみなされ刑事事件となって以降、一時的に支給停止となっていた上院議員としての給与も請求できるのではないかとみられている。

 昨年の総選挙で自由党が勝利したため、保守党政権時代に起こった上院議員不正受給事件についてはハーパー前首相の関与など、やや関心が薄れたような感は否めないが、今後は検察側の説明や他の3議員の裁判に注目が集まる。

 

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