紀元前後にまたがり、中東で栄えたアッシリア帝国。ここで1〜3世紀ごろに創設されたアッシリア東方教会を起源とする中東のキリスト教派・カルデア・カトリック教会は、イラク・バグダッドに本部を置き信者は約50万人といわれている、ローマ教皇直属のカトリック教会だ。

 この教会に属するオンタリオ州ロンドンの神父が、イラクからの難民を支援するための寄付金50万ドルを横領、ギャンブルにつぎ込んでいた疑いで警察の捜査を受けている。

 この神父は、同市の聖ジョセフ・カルデア・カトリック教会のアメール・サカ容疑者。本人がカナダ管区長エマヌエル・シャリータ司教に告白したことから、明らかになった。

 サカ容疑者が2月23日、電話で寄付金全額がギャンブルに消えたことを伝えると、シャリータ司教は即座に神父の資格を停止。また翌日にはサカ容疑者を、トロント市郊外にある神職者のための中毒リハビリ施設に送り、数日間のセッションを受けさせた。

 先週末に行われたメディアの取材に対しては、警察の捜査中であり教会としてはサカ容疑者の告白が事実かどうかについては確認できないと答えている。またオンタリオ州ロンドン市警察は、告発に基づき金融犯罪捜査を行っていることを認めている。

 トロントに本部を置くカルデア・カトリック教会カナダ司祭管区は、イラクからの難民が増え続けていることを踏まえて、前ローマ教皇ベネディクト16世により5年前に創設されたばかり。今回の事件の舞台となった聖ジョセフ教会のほか、いくつかの同派教会がオンタリオ州に存在する。

 同州ハミルトン市のローマ・カトリック教会管区の長を務めるマーレイ・クロッシュ大司教によると、サカ容疑者はイラク難民を支援するための寄付金集めグループのリーダーを務めていたという。ハミルトン教会管区は20人ほどのイラク難民スポンサーシップを、サカ容疑者のために申請していた。そのうちの約10人はすでにオンタリオ州南部に到着しているが、今回の事件で金銭的支援が受けられなくなる恐れがあり、ハミルトン教会教区が直接その面倒を見ることにしている。

 難民スポンサーシップを申請すると、そのカナダ到着から少なくとも1年間は支援を続けることが義務付けられ、一人当たり約6千ドル、4人家族では2万〜2万5千ドルが必要となる。

 今回の事件は、もともと不安定な立場の難民に、さらに追い討ちをかけるような格好となってしまったと、クロッシュ大司教は取材に語っている。そのうえで、ローマ・カトリック教会は決して彼らを見捨てないという態度を示す必要があるとしている。

 

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