全米『ゴジラ』ファンの熱望に応えて

映画『ゴジラ』の3D版がアメリカで制作されることが決まり、今回その撮影のためにバンクーバーに来ました。『ゴジラ』は1954年(昭和29年)日本で第1作目が制作され、その時私は主演を務めました。その後50年間に『ゴジラ・シリーズ』は日本国内で28本制作されたのですが、そのうち6本に出演しています。打率としては28打席6安打でイチローよりいいですかね(笑)。
アメリカにG-Fanというゴジラのファンクラブがあり、全米で約一万人の会員がいます。2010年にシカゴで会合が行われた際に招待され、会員の方々から熱烈な歓迎を受けました。その後、彼らを日本にも招待し、東宝のスタジオ見学などを楽しんでいただいたり、交流を重ねてきました。その方々が、アメリカで今度『ゴジラ』が制作されたら是非私に出演を、と働きかけてくれた事が今回の出演につながったようです。60年前の初回作品に出演していた私がまだ現役だということで、アンモナイトや化石のように感じて下さったのかもしれません(笑)。どんな役回りで出演するかは、来年5月公開予定の本編を楽しみにしていてください。

『ゴジラ』は私のクラスメート

東宝にニューフェイスとして入社したのが1953年(昭和28年)でした。その翌年、『ゴジラ』の第1作目で主役を演じることになりました。ですので、『ゴジラ』は私にとって同級生、クラスメートのような存在です。今や彼は世界的な大ヒーローになってしまいましたが(笑)。

『ゴジラ』誕生の真実

1954年ビキニ環礁で、第五福竜丸がアメリカの水爆実験により被爆するという恐ろしい出来事がありました。日本は、広島・長崎に投下された原爆により、世界唯一の被爆国だったので、世界で唯一核廃絶の声を上げる権利を有する国でした。そのような社会的背景を踏まえ、海底に眠る恐竜が、水爆実験で覚醒し、日本を襲うというストーリーで、平和の祈りを込めて作られた映画が『ゴジラ』だったのです。『ゴジラ』は怪獣映画でしたが、作られたきっかけは決して荒唐無稽なものではなかったのです。
ところが、当時は米ソが軍拡の競争をしていた時代だったので、そんな平和への祈りを込めて作られた『ゴジラ』も、1956年にアメリカでレイモンド・バー主演のシーンを追加した再編集版が公開されたのですが、アメリカという国家に都合の悪い場面は全てカットされていました。その後2005年に、全米20都市でオリジナル版が公開され、ニューヨーク・タイムスなど各紙で絶賛され、オリジナルの『ゴジラ』の本来の制作意図がようやく理解されました。
実際、『ゴジラ』の恐ろしさやインパクトは、色々な意味で世界中の人々に大きな影響を与えました。スティーブン・スピルバーグも、幼い頃に見た『ゴジラ』が『ジュラシック・パーク』につながったと話しています。

ミュージカルで文化庁芸術祭大賞受賞

昨年、『ファンタスティックス』というオフ・ブロードウェイで世界最長ロングラン記録を持つミュージカルを20年ぶりに制作・演出・出演をしました。この作品で文化庁芸術祭大衆芸能部門大賞をいただきました。平常心でいい作品をお客様に提供したいと思って制作したものが評価され、本当にご褒美をいただいたと思っております。
この作品は40年前にも出演しておりました。現地で観て以来、是非日本でも上演したいと思っておりました。当時は『風と共に去りぬ』や『マイ・フェア・レディ』などの大舞台に出演していたのですが、オフ・ブロードウェイの小さな劇場でお客様の厳しい目線にさらされながら演じることは、役者として是非やっておくべきだと思いました。

バンクーバーのみなさんへ

バンクーバーは、15年ほど前に夫婦で船旅をした際に、アラスカクルーズの前に半日だけ立ち寄りました。今回、残念ながら天候には恵まれておりませんが、緯度はかなり高いところにあるにも関わらず、日本とさほど気温も変わらず快適ですね。日本は未曾有の災害にも見舞われましたが、ようやく景気も回復しつつあります。外から見られたら色々不満もおありだと思いますが、また春や秋など季節柄のいい時にいらして下さい。

 

(取材 今江武司)

 

宝田明さん

1934年4月29日旧満州ハルピン生まれ。東宝の第6期ニューフェイスとして入社し、「ゴジラ」や「大学生シリーズ」で一躍スターとなる。その後もミュージカルを中心とした舞台に活動の場を広げ、タレント、声優、司会業など幅広く活躍を続けている。2012年には文化庁芸術祭大衆芸能部門大賞を受賞した。特技は中国語と英語。

 

宝田明さん直筆のサイン色紙を3名様にプレゼント!

ご希望の方は、住所、氏名、電話番号を明記の上、「宝田明さんサイン色紙希望」と書いて、下記の宛先までEメールかFAXでご応募ください。なお、応募はプレゼントを弊社まで取りに来て頂ける方に限ります。

応募宛先/Eメール:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. FAX:604-431-6892

応募締め切り/4月4日必着

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。